H-D FLH 1970
WRENCH MOTORCYCLE
たわいなく跳躍する
創造的なセッション
俗受けを狙わないシンプルなチョッパーだ。しかしそこに、ハンドメイドで造作したワンポイントを加えることでショップの『色』がクリアに浮かび上がっている。ガスタンクに引いた1本の細いロッドやチェーンガード、テールライトのマウントなどが、飾らないフォルムをてきめんに際立たせている。
作り手の柳澤さんは、シンプルに乗りたいというお客さんの要望を受けて自分なりの解釈でまとめたと言う。作る時はいつもそうであるように、いろんな物を貼り付けるのではなく引き算の思考でカタチをととのえていった。
「ガチャガチャさせるんじゃなくて必要最低限のものだけの方が良いのかなと。あとはフェンダーステーとかもフラットバーで単純に作ると普通なんで、ちょっと面白いことをやりたいというのは正直ありますね(笑)」
こうした各所の『面白い』造作がそれぞれに呼応して、金属質な車体に有機的な表情をもたらせている。ひとつずつ丹念に加工していった人肌の通ったオーナメントパーツは、同店の核となる部位だ。
「作り物が得意なつもりもないんです(笑)。あとは結局、お客さんに昔僕が作った物と同じ物を作って欲しいと言われても作りたくもないし、作れないんで。だからまずはなんとなく手を動かして形にしていく感じですよ」
全体感を見てみよう。リジッドフレームに前後19/18インチホイールをセット。そのフロントはアエルマッキ125cc用のベアリング内径を加工して流用したもので、フットブレーキも引っ張るのではなく押して機能するように身を入れて製作した箇所だ。そんな氏とディスカッションを重ねていると、ふと、グレイトフルデッドの後継者と言われる米国のジャムバンドの名が挙がった。そしてどうやらそれが、カスタム時のインスパイアの源泉のようだ。
「CDだと1曲5、6分だけどライブだと同じ曲でも平気で20分とかやるんです。まあジャムバンドで1回やったセッションと同じものは一切やらないっていうコンセプトなんであれですけど。だからなんか上手く言えないですけど無限だなとか思って(笑)」
同じ曲でも年と会場が違えばまったく別のセッションになるときもあるそうだ。その創造的自由なスタイルは、同じ物作りの人間として波長をつなぎ、日々の作業の一翼を担っている。「このバンドではなく別のラジオとかを聞きながら仕事していたらこういうカスタムは出来ないかもしれない」と、氏はその後継者に裏拍で共振する。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1970 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークはスタンダードのFX35φ用を装着。ホイールはアエルマッキ125cc用の内径を加工した後にセット。
GAS TANK
ピーナツタンクをナロード。トンネル部を少し深めにしてマウント。横に走る細いロッドがアクセントに効く。
FOOT CONTROL
操作系はワンオフで製作。機械加工では出来ないハンドメイド固有の手曲げや切削部分などが同店の『味』となる。
MUFFLER
大枠はシンプルなチョッパー製作を前提とし、その中でマフラーを始めとしてわずかに造作に動きを加えて成形。
CHAIN GUARD
チェーンガードなど控えめな箇所に手作りのオーナメントパーツが添えられる。その存在感は意外なほど高い。
TAIL LIGHT MOUNT
テールライトを下側で支えるマウント部やフェンダーステーとつながるナンバーステーなど、有機的意匠が光る。
BUILDER’S VOICE
WRENCH MOTORCYCLE
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