TRIUMPH T150 1972
HEIWA MOTORCYCLE
かたずを呑む
3本の矢の波動
次はどう仕掛けてくるのか。人種の垣根なく、和洋全土のファンがその動向にエキサイトしている。今回はトライアンフT150、いわゆる3気筒エンジンのトライデントでの一勝負。案の定、昨年のホットロッドカスタムショーで公開したあの地点から、その評判は欧州や東南アジアの熱狂者を取り込んで縦横へと駆け抜けた。
「3本の矢(three arrows)という名前を付けた通り、3本のマフラーが集結して出るようなデザインにしたり、ツインでは出来ないような雰囲気にしようと思って作りました」と、ビルダーの木村さんは初めて素材に使った3気筒トライデントを前にそう語る。
まずマフラーだが、横から見ると一直線上に3本の排気口が出てるのが分かるだろう。が、この3本をそのまま横に並べていったのでは外側に出っ張り過ぎて上手くない。そこで氏は、それぞれのパイプを半分ぐらい凹ましてその空いたスペースに他のパイプが重なるように成形。よく見ないと分からない、細やかな技巧を凝らしている。
次にワンオフのガスタンクからリアエンドへとつながるラインには、いつもよりシートカウルのボリュームを縦に持たせたデザインで特製。また、シート下のフレームを覆う造形とすることで一連のスムースな流れを相乗させている。そしてサイドカバー風のオイルタンクも、他の外装と呼吸を合わせるかのような見事なハーモニーで収められた。
一方、木村さんの持ち味が発揮されたメカニカルなディテイルも健在。フットコントロールのリンケージに目をやれば、まるでクロノグラフを思わす精巧な作りもさることながら、ニッケルメッキやブラスのコンビの質感がハイエンドな装いを増幅。そしてそこには確実な機能性も担保されている。
「英車なんでブレーキぺダルが左側なんです。それをこれは国産車のハブを加工して付けてるんで、左側から中を通して右側のブレーキロッドとリンクさせてる感じですね。何か『やった感』がないとなあと思って(笑)」
他にも、キャブである。ファンネルを付けたためエアクリーナーボックスがなく固定されない。そこでステーを用意したまでは良いが、敢えてパイプを使ってオイルライン風に見せるという高度な隠し球をセット。ただのフラットバーなどを使う発想がない時点で寒気がする。
何をとってもすべてが洗練され、一続きの完全な波動を生み出している。それは、うっとりしてつい身を任せてみないではいられない、心地よい波のうねりだ。
TRIUMPH T150 1972 DETAIL WORK
FRONT FORK
ホンダ製トライアルバイク用フォークを流用加工し、スモールドラムを装着。流れるようなライトステーが個性。
GAS TANK
前方にボリュームを持たせて後方へゆるやかに絞り込まれたワンオフのガスタンク。塗装は濃紺でシンプルに。
OIL TANK
サイドカバー風に見せたオイルタンクは立体的な造形で仕上げられた。注入はシートカウルを外して行う。
MUFFLER
各マフラーを半分ほど凹ましてそこに重ね合わせるように製作。メカニカルなリンケージも見せ場となる。
SEAT COWL
通常より頂点を高くして高低差を付け、曲線を持たせたシートカウル。シート下のフレームを覆うデザインに。
NUMBER STAY
目立たない鋳物ステーの作りにも抜かりはない。主張することなく、下側のサス形状をトレースするように囲む。
BUILDER’S VOICE
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