YAMAHA SR500 1981
GREASE MOTORCYCLE
何重にもかさなる
アイデアと技の空中戦
余すことなくありったけがブチ込まれた一台だ。作り手の指紋が付いてない箇所はどこにもないほどに、全面に渡って精妙な作りで構成されている。そこからは半端な温度で作り上げたものじゃないことがヒリヒリと、沁みるほどに伝わってくる。
起点は、海賊のドラマだと主の鈴木さんは言う。はまって見ていたその船長が乗るバイクは一体どんなものだろう。それを基軸に据えて形にしたのが、このショーバイクだそうだ。
しかしスタイル的なパイレーツの要素もさることながら、あちこちで発光するディテイルがまた鮮烈。中でもフレームは、当然公道で走ることを前提にしているため強度計算から始まり、公認を取るためのプランジャーサスの設計、強度検討書の作成と、かなりの労力を要した部位だ。
「まあ公認に関しては自分ではメーカーがやってることに近いのかなって。あとはもうカッコ良くしかないですよね。例えばフロントフォークのひねりは、散歩した時にたまたま見付けた歩道橋の柵を参考にしてますし」
アイデアの元は目先のところにゴロゴロと、沢山転がっていると話す。そしてその柵を見た氏が、スプリンガーフォークのフロントレッグをステンレスで削り出してひねりを加えたように、他にフロントブレーキにも凡人の発想を超えたところで鋭いライナーが飛び交う。
それは、ブレーキワイヤーを無くそうとしたことが動機だった。ワイヤーを全部取ってやろうと参考にしたのは、100年以上前に使われていたからくり人形などのギアシステムで、それをバイクに活かせないかと作業に着手。結果ホンダの旧ドラムブレーキを、2つのギアを介して自転車のチェーンを使い駆動させている。
また、スーサイドシフトのリンケージもメカニカルな印象を押し出すためあえて複雑に構築。でも動きが悪くならないように、テコの原理を用いて長さを調節し万策を講じるなど抜かりはない。
「元々構造物が好きなんですよ。アイデアが先に来て、その設計図を描いて、頭の中で一回シュミレーションするんです。で、こうやったら動くだろうなって頭の中で出来たものはだいたい現実に出来るんで」
実に爽快だ。その言葉には、炭酸ガスがのどを通った後のような心地良さがある。自分の腕に対する自信と、湧き立つアイデアの泉。何より、10代から慣れ親しんできたオートバイとしての乗りやすさ。そこには決してショーバイクだけで終わらせない、走りの流儀が根ざしている。
YAMAHA SR500 1981 DETAIL WORK
FRONT FORK
74スプリンガーのレプリカをベースに、フロントレッグをステンレスでひねりを加えたデザインにリメイク。
FRONT BRAKE
往年のホンダXL250S等に採用されたドラムブレーキを、テコの原理を応用し2つのギアを介してチェーンで稼働。
GAS TANK
内側にゆるく絞ったナロータンクはスチールでワンオフ。ガスキャップはアルミ製のポップアップ式となる。
SHIFT CONTROL
シフトコントロールはスーサイド化。リンケージを敢えて多く使い、配管と合わせてメカニカルな印象を増幅。
REAR FENDER
アルミ製フェンダーステートップはフライス盤で線を引き、サンダーで削り鋳物風に。テールライトもワンオフ。
PLANGER SUSPENSION
縦型スライダーが上下にスライドしてショックを緩衝。アブソーバーは回転式のドア用ダンパーを流用する。
BUILDER’S VOICE
GREASE MOTORCYCLE
住所 | 愛知県日進市北新町大洞435-1 |
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電話 | 0561-76-2250 |
SHOP | GREASE MOTORCYCLEのショップ紹介 |
営業時間 | 13:00 ~ 20:00 |
定休日 | 月曜日、火曜日 |