H-D FXSTSB 1997
KATSU MOTORWORKS
見えない贅沢に潜む
作り手の苦節の足あと
ニュースクールなチョッパーを作ったかと思えば、欧州車でカフェレーサーを作ってみたりと、ジャンルに固執しない自在なカスタムに取り組む『カツモーターワークス』。今回の力作は、ビルダーの勝本さんが得意とするオールドスクール・チョッパーだ。
ベースになったマシンはFXSTSB、通称バッドボーイ。それはストックに近い状態で持ち込まれ、当初オーナーの希望はタンク変更とフラットフェンダー化という比較的ライトなカスタムに留まっていた。が、打ち合わせを重ね話を詰めていくうち、プランは大幅に変更。フルカスタムへと舵を切っていくことになる。
まず、「右(マフラー側)から見た時に野暮ったかった」という理由から、フロントキャリパーは右から左サイドへと移設。そしてハンドルもフロントフォークのナローなラインに揃えるべく苦心を重ねたセクションだ。純正ライザーを用いず、トップティーに穴を開け、ネジを切って取り付けている。
特徴的なデザインのタンクも興味深い箇所。オーナーはスポーツスタータンクを希望していたが、氏は丸みを帯びたタンクの方が車体にフィットすると感じ、双方の意見の絶妙な均衡を取ったタンクをワンオフで製作している。
一見して分かりにくいが、勝本さんが最も時間と労力を割いた箇所がフレームだ。タンク下をクリアにすべく、野暮な形状のフレームをモディファイ。代わりに補強を入れ、エンジンハンガーも製作。EVO(エボリューション)特有の無骨なフレームデザインを、成形してモールディングも随所に行うことでスムースな印象へと生まれ変わらせている。
「この作業に数週間かかりました。(塗装が)黒なんで分かりにくいですけどね。見えない贅沢です」と、勝本さんは笑う。
フレームのモディファイと同じく、氏が手間をかけたのが随所に見られる製作物。ハンドル、マフラー、シッシーバー、テールライト、各部のロッドやステーはステンレスで作られている。一般的に鉄と比べて加工が難しく、曰く、「恐ろしく時間がかかる」と言わしめるステンレス材。しかしそれでも鉄のメッキとは違った輝きや、劣化しないタフさなど、ステンレスには時間に替えられぬ魅力があるそうだ。
かくして完成したEVOチョッパー。シンプルに見えて、その細部にまで目をやれば、随所に宿る勝本さんのクラフトマンシップ。曇りのない一台である。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON FXSTSB 1997 DETAIL WORK
HANDLE
絞り込んだティラーバーは、氏曰く「すり抜け番長」仕様。ステンの輝きが映える。グリップはビルトウェル。
HEADLIGHT
純正ダンパーが備えられていた位置には、2連の4インチヘッドライトをマウント。LED球に変更される。
FRONT CALIPERS
カスタムテック製のキャリパーは左へ移設。メーターもここに配される。タイヤはトライアル用のK950を選択。
MID CONTROL
ミッド化にあたって、干渉していたインナープライマリーをグラインダーでカット。クラッチにBDL製を使う。
SEAT
キング&クイーンシートを採用するにあたり、Rサスをリジッド化。リジッドバーは六角棒でワンオフ製作。
SISSY BAR
キュッと締まったナローなデザインが美しいシッシーバー。テール本体も旋盤を用いて製作された一点モノだ。
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