H-D FLSTS 1999
COSMIC
絶景で覚醒された
カスタムカーの教典
仙台コズミック。言わずと知れた、隙なく作り込んだ『フリスコスタイル』の俊傑として鳴らしたチョッパー屋だが、今回の一台を前に緊張が走る。今でこそフリスコのイメージが強い同店だが、約16年前に製作されたこのネオボバーには、代表の三浦さんのバックボーンがとっぷりと染み渡っている。
「確かに今の人は意外に思うかもしれないけど、昔から知ってる連中は俺らしいって思う一台だよ。これはカスタムカーのレッドスレッズ系のインスパイアだから」
バイクではなくカスタムカーが土壌にある。それも上っ面をさらった小手先なんかではない、骨の髄まで浸かって育(はぐく)んで来たカルチャーが投影されたものだ。氏が10代から慣れ親しんできた景色が他人とは違う絶景なだけに、産み出されるクリエイションもまた番外の輝きを帯びる。
これは、カスタムカーの『レッドスレッズ』系の流れを汲んだマシンだ。1950年代からエド・ロスと並んでスターダムを駆け上がったカスタムビルダーの巨星、ジョージバリスが手掛けたことで知られるそれは、鉛を使った滑らかなボディワークが特長で、その手法がにわかに落とし込まれている。
「鉛は使ってないけど俺らがやってることって溶接して鈑金してだよね。これはそこにカスタムカーのやり方を入れて作ってる。言ったらキリないんだけどテールランプなんかもそうだよ」
アメ車から流用したテールランプをビッグフェンダーに埋めて成形。埋め込む手法はあくまでレッドスレッズのやり方に倣い、他にガスタンクを始めとした外装はもちろん、シートのデザインや、ホイールのリムだけ黒く塗ったメッキとのコンビネーションなども全て、氏が心を通わせてきたカスタムカルチャーからのインスパイアだ。
また色使いにおいても氏の磨かれた審美眼がゆきとどく。本来このスタイルだとフォークとヘッドライトをボディと同色に塗るのは敬遠されるが、逆にエボリューションの質感とマッチすると踏んで塗装。そしてタンクのツートンカラーには白ではなくアイボリーで重みを出し、境界線にはあえてゴールドのピンラインを選択。こうした金属加工から色味にまで宿る次元の高い物作りは透明感を増すばかりだ。
言ってしまえば秘蔵の一台。進化を遂げたテクニカルなフリスコスタイルの覇者として名声を誇る氏の、決して言語化してこなかった原点がここにある。
HARLEY-DAVIDSON FLSTS 1999 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはアーチを入れてクラシックな装いに製作。ブラックアウトすることで引き締まった印象を演出する。
FRONT FORK
純正スプリンガーをローダウン。ライトと共にボディと同色に塗装。そしてホイールリムをブラックアウト。
GAS TANK
ワンオフのガスタンクはアップルレッドとアイボリーのツートンにペイント。タンク横にシフトノブを設置。
SEAT
経年劣化の風合いが馴染むカービングシート。往年のレッドスレッズのデザインは至る所に取り入れられている。
MUFFLER
サイレンサーにデッドストック品を装着し、エキパイはワンオフ。フロント同様にホイールリムをブラックアウト。
REAR FENDER
ビッグフェンダーはカスタムカーからのインスパイア。埋め込んだテールランプはそれに準じた手法で製作する。
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