HARLEY-DAVIDSON FL 1955
SATISFACTION
細く小さくシンプルに貫く
真面目なオールドスクール
これまでロングフォークにカスタムした国産アメリカンに乗っていたオーナー。初めてのハーレーはパンヘッドに決めていたというその彼が、記念すべきファーストハーレーの製作を依頼したのは大分の老舗、『サティスファクション』。
ビルダーの山口さんは、その当時の思いをこう話してくれた。
「オーナーは背が高くていわゆる『細マッチョ』。彼に合わせて細く小さく、キュッとしたスタイルにしようと考えました。このバイクに関しては特に『真面目に』きっちり作ろうっていう思いがありましたね」
山口さんの言う『真面目』とは、気をてらわぬトラディショナルなオールドスクール・チョッパーを示す。なるほど、これを見てその意志が如実に反映されたマシンだと納得する。
フロントエンドにはHOG KILLERS製35mmのナローツリーと現行スポーツスターのフォークを用い、走行性を司るサスペンションとしての信頼性とナローなスタイリングの両立に成功している。
一方、エンジン&ミッションはストック。このセクションで目を引くのは、銅管で作られたオイルラインだ。無機質なエンジン周りに飛び込んでくるこの有機的な色は、外装に引かれたゴールドラインやブラスのエアクリーナーカバーらと相まって、車体に絶妙な差し色を呈している。
乗り味にもこだわった。
「フォワードコントロールでは乗り手の足が伸び切っちゃうでしょ。やっぱりチョッパーは足を曲げて悠々と乗りたいので、フットコントロール系は少し後ろに下げました」
そして座り心地にも気遣いが行き渡る。
「シートも厚めにしてるんです。薄い方がかっこいいとは思うけど、長い時間乗ってるとお尻痛くなっちゃう。だから厚めに作ったんです。大分~熊本の往復くらいは頑張れちゃう仕様ですね(笑)」
タンクやリアフェンダーなどの外装のペイントは、’60~‘70年代チョッパーにありがちなサイケデリックなものを避け、落ち着きのある濃い目の赤茶を黒で締めるという、飽きのこない色彩でまとめる。
フロントエンド、ナローなハンドルバー、ピーナッツタンク、ショートなリブフェンダーと、製作前から描いていた「細く小さく、キュッとした」スタイリングは定番ながらも秀逸なパーツチョイスで結実された。
冒頭、山口さんが語っていた『真面目』というテーマ。それをまさに体現したと言える一台ではないだろうか。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON FL 1955 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはステンレス製のワンオフ。インナースロットル化されスッキリした印象に。ミラーはビルトウェル製。
FRONT WHEEL
フロントは21インチにミニドラム。リアはリジッドということでFサスには信頼性の高い現行品を選択。
GAS TANK
ピーナッツタンクのキャップ位置を変更、トンネル加工等を施しモディファイ。シンプルなH-Dの文字が映える。
SEAT
福岡の『スタイル』が製作したシート。赤のステッチと革質を変えた側面、シャープなシェイプが美しい。
MUFFLER
マフラーは低い軌道でシンプルなパイプを求めた結果、パウコ製をチョイス。蛇腹でビンテージ感を演出した。
SISSY BAR
シッシーバーはワンオフ。デザインはデュオテールありきで製作。テールを囲むようなラウンドしたフォルム。
BUILDER’S VOICE
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