
H-D KNUCKLEHEAD
INDIAN ORANGE MOTORCYCLE
ダブルキャブに馳せた
孤独な囚人とのコンタクト
北九州の炭鉱の町で育った男特有の、『腕一本』な感じが良い。店主の小田さんにとってこの一台は、『SPEED ADDICT(スピード中毒者)』と称してシリーズ化した第一号機にあたる。
「ドラッグレースに出るために作った自分用のバイク。その後2017年に車体は別で、エンジンをチューニングしてボンネビル(※世界最速を競うレース)にも出たやつです。でもレースに出ると言っても当然街乗りもするんで、スタイリッシュな感じにしてる」

ゴリゴリのレーサー然としたフォルムではなく、ストリートユースでも映えるデザイン。そこに同店の伝家の宝刀、徹底した作り込みが合わさることで、他を寄せ付けないビリついた電磁波が帯びている。

まずは、何はなくともエンジンだ。ダブルキャブにしたかったことで、シリンダーヘッドを加工。デロルトPHM41が並列で付くように、マニホールド部分を一度全部潰して埋め直し、そこから改めて作り直されている。またその際、シリンダーが鋳鉄で溶接が効きにくいことから、ブレージング溶接という溶接箇所をほとんど溶融させない接合法で処理。「ジョーペトラリとかピートヒルとかあの辺の伝説のレーサーに憧れたのもある」、とは本人の弁だ。

フレームもイチから製作したクライシスで、1インチ径のパイプを使い、ベンダーで曲げてガスで炙り調整していった非常なセクションである。フレームエンドも落ち度無く、往年のヒルクライムレーサーに倣いラウンドテールに完遂。そんな芯のある氏の美学は、こんな言葉に見て取れる。
「なんで1インチにしたかって言うと、昔のアメリカンドラッグレースの規定で1インチの鉄パイプを使えっていうレギュレーションがあったんです。だからそれに合わせてる」

ガスタンクにしても、そのままポン付けすることはない。段差のある立体的なデザインは、トップとサイドパネルを一旦切り落とし、その落とし込んだ周囲に壁を張っていく感じで鉄板をあてがい成形したものだ。また、テールカウルにしても、そのままではのぺっとした印象になってしまうため、エンドをわずかに跳ね上げアクセントを付けるという、細やかなモテ男的配慮が行き届く。

しかしこうした陽の目を見る裏方は、とにかく孤独な作業の連続だ。その神々しいまでのストイックな運動は時に、独房に入れられた囚人が自らの肉体を延々鍛え上げる姿にも酷似する。
HARLEY-DAVIDSON KNUCKLEHEAD DETAIL WORK

FRONT FORK
フロントフォークには名品セリアーニのオールドGPを装着。ブレーキはカンリン製ダブルパネルをセット。

GAS TANK
トップとサイドパネルを一段落として立体的デザインとしたガスタンク。只で終わらせないのが同店の作法。

CARBURETOR
どうしてもやりたかったことでダブル化。デロルトPHM41のセットアップにあたりシリンダーヘッドを加工。

TAIL COWL
鉄板を叩き出して、エンドを僅かに跳ね上げる。フレームとの固定箇所などテクニカルな仕上げがならではだ。

FRAME
フレームエンドは当時のヒルクライムレーサーをイメージしてラウンド型に。パイプは1インチ径を使用。

REAR END
ロッドを抜いて折り畳み式となる技巧的プレートやチェーンカバーに、作り手の熱量の高さが現れている。
BUILDER’S VOICE
INDIAN ORANGE MOTORCYCLE
| 住所 | 福岡県北九州市若松区二島4-1-43 |
|---|---|
| 電話 | 093-701-0557 |
| FAX | 093-791-2008 |
| SHOP | INDIAN ORANGE MOTORCYCLEのショップ紹介 |
| 営業時間 | 10:00 ~ 20:00 |
| 定休日 | 火曜日(第2火曜除く)、第2日曜・月曜日 |

H-D FXDC 2005
H-D XL1200S 2001







