H-D S&S KNUCKLEHEAD
DRAG ON
巧みに盛り付けられた
ドクターフィールグッド
オールドレーサーを思わす、スピード感漂うフォルムにグッとくる。前後21/15インチホイールのセットアップに、懐にはS&S製ナックルモーターを搭載。そこにW&W製レプリカタンクを装着したコンパクトなボディラインからは、往年のレースシーンで輝きを放ったスピード狂たちの姿がフラッシュバックする。
今回の一台を手掛けた速水さんは、どんなスタイルのカスタムでも狙ったフォルムへと味をととのえ、作り込んだ上で皿に乗せる料理人。そこに荒さや手抜かりはなく、いつも几帳面に、時間をかけて作ったメニューを丁寧に盛り付けてゆく。そんな印象だ。
「これはオーナーさんの希望を具現化したもの。自分のやりたいことをしっかり持ってる人だから、それに応えるようにこれまで俺が経験したことのないこともやってる。その辺が大変でしたね」
自分の引き出しにはない、初めて触る部品や構造を理解して取り付ける。一朝一夕にはいかず苦労が多い分、得るものも多い。こうしてお客さんを通じてビルダーは育てられていく一面もある。
「これなんて凄いですよ。ゴーカートのブレーキらしいけど、油圧じゃなくて機械式ディスクって珍しいでしょ。リンケージをワイヤーで引くとブレーキパッドが出てくる構造なんです」
そんな意外な角度からのパーツチョイスは、33.4φのフォークとの相性も上々。だいたい半分ぐらいは持ち込まれたパーツを使ったと話すナックルは、統一感を持たせて首尾よくまとめ上げられている。
さて、左出し仕様のマニホールドにも触れておきたい。アルミ5052材で製作したそれは、2ピースから成るワンオフだ。まず片方ずつ旋盤で地道に引いて成形し、数値をしっかり追い込んだ上で双方を溶接。溶接跡のビードが残るとやった感が出てしまうため、それを嫌って綺麗にスムージング処理。口数少ないビルダーがぼそっと主張した箇所だけに、やはりその具合は良い。
そのまま視点を左に移してハンドシフトである。この種のオールドスタイルであってもシフトの支点にはベアリングを挿入。カスタムの形が何であれ、機能性を考慮した同店の作りは踏襲される。「入れてますよ(笑)。あとチェーンはサンダンスのシールタイプですね。ノイズが減るし耐久性も向上するから」。
嬉しそうに笑い飛ばしたそれはきっと、「そんなの当たり前」という言葉の裏返し。同店のカスタムマナーは、こうした細やかなディテイルにこそしたたかだ。
HARLEY-DAVIDSON S&S KNUCKLEHEAD DETAIL WORK
FRONT MASK
レーサーにもチョッパーにもいけるFORK製エンデューロフェイスを装着。マシン全体のアクセントに効く。
CALIPER
ゴーカート用の機械式ディスクを流用。オーナーの希望で選択したオールドスタイルに馴染むキャリパー。
HANDSHIFT
ハンドシフトの支点にベアリングを内蔵。左出しのマニホールドもワンオフで、タンクはW&W製レプリカを採用。
OPEN PRIMARY
レーシーな雰囲気を増幅させるオープンチェーン。伊国トマゼリのフットコントロールを加工してマウント。
BRAKE DRAM
ブレーキドラムにひとつずつ空冷フィンを溶接。約一日かけて仕上げた冷却効果も狙ったアイキャッチパート。
FENDER STAY
左右2ピースのフェンダーステーはステンで製作した後に黒染め処理。時代考証を踏まえてマイナスネジで固定。
BUILDER’S VOICE
DRAG ON
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