HARLEY-DAVIDSON FX 1979
DRAG ON
テクニカルに打つ
ベアリングの一手
どのカスタムバイクにも、見かけでは分からない精緻な作りがちょこんと潜んでいる。いわば、ビルダー速水唯(ゆい)さんの細やかな性格が反映されたかのディテイルワークだ。例えばこのチョッパーを見ても、テクニカルに仕上げたハンドシフトやミッドコントロールの造形ばかりでなく、その可動部すべてにベアリングを内蔵するといった配慮が行き届く。
「支点の両サイドにシールドタイプのボールベアリングを入れてます。これは作り手の考え方だと思うんだけど、ここって長く使うとどうしてもガタガタしてくる。ウチはそれが嫌だから入れてる」
シンプルに、速水さん自身このガタが嫌いなためにひと手間加えている箇所だ。フットコントロールのブレーキとシフトの両側、そしてハンドシフトの可動部にベアリングを挿入。その支点をつかんで左右に振れば分かるが、ピタリとガタの無いそこは効果てき面だ。
「ベアリングの影響とまでは言わないけど、動きもまあスムーズになるかな。自分が作るものでこうした可動する部分には出来るだけ入れるようにはしてます」
口数の少ない速水さんはぽつりぽつりと、外見では分からない『仕込み』を語ってくれた。ちなみに、こうした部位を自ら率先して話さないところがまたいじらしい。訊ねてようやく口を開くそのふるまいは、なんだか古き良き職人の姿とリンクする。
さて、順番が逆になったが全体像も追ってみたい。これまでオーナーが乗っていたバイクの調子がなかなか出なかったことで、そちらに見切りをつけてスタートしたカスタムだそうだ。そこで、エンジンとミッションがすでにオーバーホール済みだった車両をベースに、タンクとフェンダー、シッシーバーなどは要望を聞いてワンオフで製作された。
「別に細かい注文は言われなかったかな。だから外装は特別何をしたわけでもなくいつも通り。まあしいて言うならオールドスクールですか。そこから漏れないような車体にはしてます」
このスタイルだと普通はフォークに74スプリンガーを付けるところを39φのテレスコにしてる点もポイントかな、と氏は付け足す。そして今回新たな試みに挙げたのがシッシーバーだ。曰く、「見ての通りただの曲げ棒だけど、デザイン的にはこれまでの自分にはなかった物になっている」とのこと。そこには多くを吸収し、進化を続けるビルダーが、自らの旅の途中で描いた景色がのびやかに広がっている。
HARLEY-DAVIDSON FX 1979 DETAIL WORK
FRONT FORK
フロントエンドは、「一般的にこのスタイルなら74スプリンガーだろうけど39φのテレスコにした」と言う。
ENGINE
スプリットフィンドロッカーが個性のエンジンはオーバーホール済みの1340ccで、Eキャブをセットする。
HAND SHIFT
シフトはステン材でワンオフ。軸になる可動部の両サイドにボールベアリング内蔵というひと手間が加わる。
FOOT CONTROL
カチッと作り込まれたミッドコントロールもワンオフ。ベアリングは勿論、フットステップ下には補強を付加。
SISSY BAR
シッシーバーの造形は自分にはないデザインでエキサイティングだったという箇所。ライトはルーカスタイプ。
REAR WHEEL
リアホイールはポリッシュ済みのツアラー系10本スポークを装着。キャリパーはブラックのPM4ポットを選択。
BUILDER’S VOICE
DRAG ON
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