TRIUMPH T140 BONNEVILLE
SHALLOW MOTORCYCLE SHOP
マフラーはおとりの
スリムシート
セパハンとシッシーバーという一見奇をてらったかの組み合わせを、事も無げに鞘に収めたカスタムだ。それでいて、スタイリッシュ。気鋭の作り手が弾けるパッションの赴くまま、ただやみ雲にセットアップしたわけではない均整の取れたバランスに、その実力のほどが覗く。
名古屋のシャローによる’86年式T140ボンネビル。大きくボテッとしたノーマルの外装を一新して、スマートに、サラッと乗れる仕様にまとめた一台だ。
「ポイントはタンクとシートをかなりスリムに作って、アップマフラーを交差させてアクセントを付けたところ。マフラーはベンドパイプをつないで溶接痕をそのまま残して、荒々しさを出してます。参考にしたのはスクランブラースタイルのアップマフラーですね」
店主浅井さんの意外な返答に「えっ!?」となるが、元々セパハンにする前はアップハンを付けたスクランブラー仕様だったとのこと。その名残がこのマフラーの、アップした部位というわけだ。
タンクは国産車の物を使い、真ん中を詰めてナロード。底板を加工してメインフレームにすっぽりと、ジャストに覆い被せている。お次はシートだ。まず鉄板で成形したシートベースを用意して、そこに黒に染めた茶色のレザーをステッチング。これは、経年劣化で地の茶色が浮き出て来る風合いを期待してのものだと言う。こうした、聞かなければ分からない作り手のカラクリにはいつだって胸躍らされる。
足周りに目を移そう。前後共に19/18インチのノーマルサイズをキープ。純正フォークにはM&M’S製のスタビライザーを付け、精悍な表情を生むヘッドライトはアメリカより仕入れたユニティを装着。別段、特別なことをしているわけではないが妙にカスタムライクに見えるのは、先のタンクとシート、マフラーが相当のインパクトを与えることで、他の印象を引っ張っているからだろう。
シートレールだって無加工のストック状態である。そして、そこにわずかにハイトを上げた高品質のオーリンズを用いることで、全体のイメージをグッと引き締めジェントルなものとしている。ワンオフと汎用品の中にあって、唯一のハイパフォーマンスパーツだからこそ効果も高い。
「苦労したのは、シートの幅を細くしたかったんで、フレーム側の広さにどう違和感なく収めるかというところですかね」。傍目ではマフラーやセパハンなどのアイキャッチ的部位に目が行くが、このマシンの本質はシート周りに秘められている。
TRIUMPH T140 BONNEVILLE DETAIL WORK
HANDLE
アップハンからセパハンへ。ノーマルのフロント周りにワンオフのハンドルを装着。レースマインドを駆り立てる。
GAS TANK
国産車のタンクをベースに幅を詰めて、底板を加工してマウント。ペイントは専用ブースを構える自社で行う。
MUFFLER
有機的に絡み合う特徴的なマフラーはベンドパイプをつなげて製作。溶接痕は敢えて残し荒々しさを披露する。
SEAT
シートレールは無加工の純正ワイド。そこに違和感なくコンパクトなシートを収納。地は茶色で黒に染められた。
REAR SHOCK
ノーマルよりわずかに長い330mmのオーリンズ製ショック。全体の印象が一気に引き締まるハイエンドパーツ。
SISSY BAR
セパハンと意外な組み合わせのシッシーバー。ハンドル周りの頂点と同高とし、シンプルな『A』デザインに製作。
BUILDER’S VOICE
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