TRIUMPH TR6 TROPHY 1965
STANDY MOTORCYCLES
宮城で灯った
エマージェンシー
「スタンディは行った?」。今回東北を取材して回っている際、頻繁に名前の挙がったショップだ。事前情報は、『トランアンフを主に扱う、今勢いのある店主』。で、コンタクトを取った後の感想から言えば、ビンゴ、である。
『勢い』というワードから想像していたのとは違い、店主の熊谷さんは豪快な野武士肌ではなかった。会話のキャッチボールをスマートにこなしつつも、そこに一癖二癖ある変化球をたまに散らすインテリジェンスを持った人物、そんな印象だ。その変化球が氏の場合はエンジンであり、こと専門的な話題になるとにわかに熱を帯びてくるのが分かる。しかし、そこはポーカーフェイス。表情でそれは悟らせない。
‘65年式TR6をベースに、エンジンをリビルド。その際ボンネビルのヘッドに換装してツインキャブ化、細かい箇所を徹底的に煮詰めてチューニングを施したと言う。また、熊谷さんの愛車であり研究材料でもあるこのマシンは、日々新たな試みにもチャレンジ。スピードで言えば相当の実数値をマークするが、最高速のみでなく、街乗りではダラダラ気持ちよく走れるようにと、何度もクランクからシェイクダウン。相反した目的を見事に均衡させたスペシャル仕様となる。
「何々を変えたから速くなりましたではなく、クランクを軸にしてバランスを良くするパーツを全部入れ込んだ感じ。例えば速くしたいからと言ってビッグバルブ、ハイコンプ、ハイカムを闇雲に入れても、確かにノーマルよりは速くなるけど乗り味には疑問が残ります」
肝心なのは、『気持ちよく走ること』だと言葉をつなぐ。乗っていて楽しくなるのが一番で、それをバックアップする強度や耐久性も決しておろそかにしない。その辺を踏まえたチューニングは、これまで培ってきた経験ありきだと言う。一台とズブズブに、もたれ合うかの濃密な関係を育んできた氏だからこそ捉えた世界はきっと少なくない。
一方、外装に関してはほぼ好きなパーツで固めたそうだ。前後19/18インチのボラーニホイールに、フォークは誉れ高きチェリアーニ・オールドGP。ワッセルのバナナタンクはボコボコだった状態から、鈑金溶接を駆使してメッキで仕上げたセクションである。これまでエンジンばかりに話が及んだが、カスタムに関しても感性の高さは突出している。
「結局は普段の足として仕上げたのが一番のポイントかもしれません」。のんびりと街中を流すのに気持ち良く、全開をくれてやれば軽々と他を寄せ付けないスピード領域へ到達。そんな相容れないチューナー泣かせのセットアップを事も無げに語る店主を前に、脳内のビンゴ灯が勢いよく反応する。
TRIUMPH TR6 TROPHY 1965 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークは名品、チェリアーニのオールドGP。ヘッドライトはガイド製トラクターで不動のセットアップ。
GAS TANK
最も苦労したワッセル・バナナタンクのリメイク。切開して鈑金で均した後に溶接、メッキをかけ仕上げた箇所。
ENGINE
ワンキャブモデルのTR6をリビルドしてツインキャブ化。ボンネビルのヘッドに換装してチューニングを施す。
SEAT
シートは仙台のジミードープが担当。牛革ではなく無理を言ってホースハイドを使ってもらった部位だと笑う。
MUFFLER
スチールでワンオフしたマフラー。形状、マウント位置共にゴキゲンのレーシーな雰囲気漂うキラーパーツ。
REAR END
フェンダーはタイヤ幅とアールに合わせて加工。シッシーバーはワンオフでクロッカーのレプリカテールを装着。
BUILDER’S VOICE
STANDY MOTORCYCLES
住所 | 宮城県富谷市ひより台1-43-13 |
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電話 | 022-725-7078 |
FAX | 022-725-7082 |
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