HARLEY-DAVIDSON S&S SHOVELHEAD
INDIAN ORANGE MOTORCYCLE
白旗に追い込む
やりすぎコージー
もはや降参である。いわゆる、見てくれを綺麗に仕上げただけのチョッパーではない。幼い頃に、夜な夜なプラモデルと向かい合っていたあの緻密な世界観が、この一台には詰まっている。そしてそれは、同業のプロフェッショナルからも溜め息が漏れてしまう類のやつだ。
「どうしたかったのか聞かれれば、カッコ良いバイクを作りたかったとしか言いようがない。あとは、例えばブレーキのシステムとか、デンバーのスプリンガーとか、細かいところ。今までやりたかったことを表現したかったんでしょうね」
店主の小田浩司は淡々と、客観的にこのマシンを振り返る。しかし、あくまでも聞かれたことに誠実に、他のカスタムビルダーもそうであるように、決してウンチクを並べることはない。でもだからこそ、発せられるひと言ひと言がズシリと腹に響く。
では早速、その細かなディテイルを追っていこう。まずブレーキシステムだが、ハンドルの左グリップを捻るとフロントブレーキが利くトリッキーな仕組みだ。しかし、ディスクでありながらマスター類が見当たらないのはシート下に収納しているからで、更に驚くべきは、ブレーキフルードのリザーバーをリアフェンダー裏に格納している点だろう。ちょうどリブの裏側にパイプを仕込むというなんともファンシーなセクションとなっている。
デンバーのスプリンガーについては、基本ロングフォークしか扱わないネバダ州の名店デンバーズへショートサイズをワンオフで依頼。しかしストローカーショベルの想定外のパワーでフォークの挙動が落ち着かないことから、ダンパーを内部に設置。だがこれが甘くはなかった。結論を言えば、フロントレッグはすべて作り直しである。「こんなことなら最初から全部自分で作れば良かった」と氏は言うが、不思議とその言葉に悲壮感はなく、むしろどこか楽しげだ。
見せ場は続く。窪んだ造形がポイントのガスタンクは、3個目にしてようやく成功した一品。まず意図したデザインに板を切り落として、その落とし込んだ部分の全周に、窪んだ深さ分の壁を貼っていくイメージで鉄板を溶接。ところが、これだけ長い距離を溶接していくと、どうしても『歪み』が出て上手くいかない。どこから始めて、どこに補強を当ててというのをしっかり考えた上で作業しなければ成し得ないシェイプなのだ。
他にも、スプリットフィンのストローカーエンジンに、クリーンに中通しされた配線やカーレース用のパイプライン、ミッション後方へ移設したオイルタンクと、見所満載である。もはやこのチョッパーを前には、白旗を上げる他ない。
HARLEY-DAVIDSON S&S SHOVELHEAD DETAIL WORK
FRONT FORK
74スプリンガー長の2インチオーバーでワンオフ依頼。油圧を挿入するためフロントレッグは全てリメイク。
HANDLE
左右をつなぐアーチなど意匠を凝らした物作りが光る。左グリップを捻るとブレーキシステムに連動する設計。
GAS TANK
窪んだ造形のタンクは高度な技術を持った作り手のみが仕上げられる一品。3個目でようやく成功したと言う。
ENGINE
S&S製4-1/2’ストローカー。エンジンは最もウエイトを置く箇所なだけに内外とも隙無くフィニッシュされる。
MUFFLER
ワンオフしたマフラーエンドに真鍮キャップを装着。その内側に外装と同系色のボックス型オイルタンクを設置。
REAR FENDER
ボルトを外すとリザーバータンクになり、フェンダーリブの裏側にはフルードの入ったパイプが仕込まれる。
BUILDER’S VOICE
INDIAN ORANGE MOTORCYCLE
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