HARLEY-DAVIDSON FXS 1980
GEE MOTORCYCLES
ブレンボキャリパーと
絞りフレームとの攻防
福岡ではその名が知られた老舗の、青木叔将率いるジーモーターサイクルズ。かつてはワイルドダックの名でチョッパーファンに支持され、現在はより裾野を広げたカスタムメニューと、リジッドスポーツを駆る青木夫人の存在で、女性客でも抵抗なく出入りできるショップだ。
1980年式FXSを素材に、なんとも軽快な装いにメイクされた一台である。オーダーはほぼお任せだったが、唯一、『安全に止まれること』という希望があった。そこで青木さんは、前後にブレンボキャリパーを装着する案を出し、それで作業を進行。しかし、いざ蓋を開けるとこれがなかなかの難問であった。
リアはサクッと装着出来たが、問題はフロントである。キャストホイールであれば、ブレンボ用キャリパーサポートは既にミスミエンジニアリングから販売済み。しかし、今回はスポークホイールだからそれには対応していない。そのため自力で付ける他ないのだが、「多少のオフセットで大丈夫だろう」とたかをくくっていた氏は痛い目を見ることになる。そう、てんで簡単にはいかなかったのだ。
まずスポークとキャリパーが干渉しないように、スペーサーを噛ませてクリアランスを確保するが、それでは今度、フォーク幅にうまく収まらない。試行錯誤のなかどうやっても打開策が見つからず、最終的にはアウターチューブの内側をサンダーで削るという力技でフィナーレを迎えることになった。
「製品化されてないということは、そう簡単にはいかないことが良く分かりましたね(笑)」、と豪快に笑う青木さんだが、このマシンは他に、フレームの造形も見逃せない。ステムヘッドから下へ2本に伸びるダウンチューブは、よく見ると内側に絞られている。これは、「これまで上方へ伸ばすストレッチは何度もやったが、ちょっと違うことをしてみたい」という欲求からチャレンジした箇所だ。
また、細部の作りもスルーは厳禁。既製品をベースにカチッと作り込んだ各パートからは、それなりにカスタムが好きな人間なら瞬時に並みでない技術レベルが推し量れることだろう。更にセンターリムやチェーンガードなど、各部を塗り分けたペイントワークには氏の細やかな配慮だって見て取れる。
丁寧で真摯な仕事。このバイクがどういう姿勢で作られたものなのかは、現車を見れば明らかだ。老舗の暖簾を高く揚げ続けるとは、きっとこういうことなのだろう。
HARLEY-DAVIDSON FXS 1980 DETAIL WORK
FRONT CALIPERS
困難を極めたスポークホイールへのブレンボ装着。すべての技術を駆使して違和感なくなんとかセットアップ。
DOWN TUBE
その都度新しいことに挑戦する氏は今回、フレームダウンチューブを真っ直ぐではなく内側に絞り込んで成形。
OPEN PRIMARY
ミッドコントロールは既製品を使い、ペグは他から流用。ペグ付け根のアルミのパートはワンオフで製作した。
MUFFLER
うねりのある有機的造形のマフラーはスチールでワンオフ。エンドの真鍮キャップはオリジナル商品で販売中。
CHAIN GUARD
フレームエンドとチェーンガードがそれぞれに塗り分けられているのが分かるだろうか。キメ細かな処理だ。
REAR CALIPERS
フロントに比べなんら問題なく収まるリアキャリパー。メカニカルな造形と鋳物の質感がマシンとマッチする。
BUILDER’S VOICE
GEE MOTORCYCLES
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