HARLEY-DAVIDSON FLH 1961
CYCLE WEST
表情に陰影を付ける
黒染めとクリームカラー
手元にやってきた時はド級のロングフォークだったと言う1961年式FLH。そこから元々付いていたホイールを使い、この手のクラシックスタイルには珍しい前後19/16インチのセットアップで製作は開始された。
手掛けたのは埼玉県比企郡にあるサイクルウエストで、当初オーナーからは、「本当にこんなロングフォークで欲しいバイクが出来るのか」と言わしめたほどの代物。『オリジナルの雰囲気を取り入れたボバースタイル』のイメージとはかけ離れたものだったが、すべての箇所を見直しモディファイを加えることで、納得の一台に仕上がった。
「うちがやったところはスタンダードなカスタムばかり」と言う代表の西山さんは、外注のシートやレザーのカービング、ペイントを今回のポイントに挙げる。とは言え、よく見るとエンド部がメガホン状になったマフラーや無数のスロッテッドを施したフェンダーストラッツ、更にエンジンのロッカーカバー形状に沿って逃がしたタンク造形など、プロフェッショナルとしての細やかな処理が要所に見て取れる。そして、各金属パーツに配した黒染めと、刺し色に効かせたクリーム色もまた見逃せない。
「どの業者さんも超が付くほど忙しいホットロッドショー前に、ダメ元で100ピース以上のパーカライジングを頼んだことがあった。でも、案の定断られて、じゃあ自分でやろうって(笑)。溶剤を全部買って試してみて、そこからはうちでやってますね」
フェンダーストラッツを始め各部に施した、独特の風合いを醸す黒染めは意外にも同店によるものだ。また、全体をブラックで統一した中に効かせたクリーム色は、西山さんの嗜好が大きく影響している。「よく使う色で、単純に僕が好きなのかもしれない。ショベル以前の古いエンジンとの相性が良いと言いますか。ついお客さんにオススメしてしまう(笑)」。
このように、スタンダードなカスタムだと謙遜するがその実、十分な手が加えられた上で、腕の立つ業者へとアウトソーシングがなされているのだ。信頼を寄せたパートナーによる相乗効果も手伝い、ハイレベルなクオリティはもはや必然である。
レザーカービングを担当したのは東京都杉並区のSO JAKEで、カービングの下絵を先行して受け取り、それをそのまま夫婦で営む山口県のペインター420KUSTOMSへトス。関連性があるようにとだけ依頼して、あとは二人にアートワークはお任せだ。そして、それぞれの地で同時に進められたその出来は言わずもがな、期待を遥か上回る完成度でフィニッシュされた。
唐草をモチーフに、レザーへ精緻に刻まれるそれと呼応するかのように、タンクのクリームラインに入るオリジナルグラフィック。そして実は、このラインは’61年FLHのオリジナルパターンだったりするわけだ。こうしたオーナーを喜ばすための数々の難いディテイルの演出も、サイクルウエストの持ち味である。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1961 DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルはハウゼンブロスのオリジナルで黒染め処理。ライザーはサイクルショップで購入した物をブラスト。
GAS TANK
ナックルのレプリカをレーシーに加工して装着。レザーカービングとパネル、スミス製メーターと見所満載。
GRAPHIC
’61年式FLのオリジナルラインを入れ、その中に同系色で420KUSTOMSによる唐草模様のピンラインが躍る。
ENGINE
リビルド済みの1200ccエンジン。経年劣化したクローム箇所を残しつつアルミ部をサンドブラスト。
FENDER STRUTS
フライスを手に入れた時に嬉し過ぎてそのテンションのまま作ったという部位。黒染め処理の風合いがオツだ。
MUFFLER
さり気にメガホン状のエンド部。オーナーを驚嘆させた「ぶった切って割って広げた」という手の込んだ箇所。
BUILDER’S VOICE
CYCLE WEST
住所 | 埼玉県比企郡吉見町大串532-8 |
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