TRIUMPH BONNEVILLE T100 2005
MICKEY CYCLE
もやの先の
澄んだ理想郷
「最初はお客さんの頭の中で、どういう形にしたいかというビジョンが出来上がってなかった。そのモヤモヤっとした状態を完成させるのが一番大変だったかな。それがしっかり出来上がってしまえば、作り手としては作業自体は慣れてるから」
店主の内田さんは、製作当時の苦労話をどこか楽し気に振り返る。普段は旧車を中心にした修理にいそしむ氏にとっても、このカスタムは特別だったに違いない。
ルアー製作を生業にするオーナーとの二人三脚で身を結んだ一台である。スタート時こそもやがかかった景色は、打ち合わせを重ねるにつれて少しずつ目や鼻をつけて輪かくが出来上がり、最終的にオーナー自身が精緻な完成像を描写することで一気に視界が開けた。
そこからは話しが早い。いよいよ店主内田さんの出番である。基本的にほぼすべてに手が加えられているが、まずバッテリーの収納場所をどうするか。キックスタート無しで900ccの排気量を圧縮してクランキングさせる大きさである。しかも完成像に忠実となると、なかなか問題点が多い。結果、シートレイルを作り直し、その下にノーマルよりもわずか高い位置でマウント。電装関係はすべてやり直したそうだ。
外装はどうだろう。純正フォークに付くカバーは工作用紙でモックアップを作り、それを参考にコンターで鉄板を切削。三本ロールでフォークのアールに合うよう巻き出し、溶接して仕上げている。そしてリアの汎用品とおぼしきリブフェンダーも、同じ流れで製作したワンオフだ。
タンクは現行のフレームに入るよう、’71年以降のトンネル幅の広いオイルインフレーム時代の物を使用。真ん中のボルトオン固定部分にメーターを埋め込みたいという要望により、メーター径に合わせてボーリング。そこに別で用意した筒を挿入して、当然ガス漏れがないよう慎重に処理されている。
他にも、リアホイールを17から16インチへ変更したのに合わせ、スポークをすべて張り直すのではなく、市販品がなかったためにわざわざ作り直して装着。またリアショックは機能性とデザインの両立を計り、『25mm』という独自の理論に基づいたクリアランスを確保してリメイク。曰く、15mmのストロークがあれば乗り心地を殺さず、更にそこに10mmの余裕があればタイヤがフェンダーに付くことは無いという経験値からだ。
そして仕上げのペイントはオーナー自らが担当。誰よりも心のこもった黒が、凛と、澄んだ表情を見せている。
TRIUMPH BONNEVILLE T100 2005 DETAIL WORK
FRONT FORK
純正フォークを約3cmローダウン。カバーは鉄板からのワンオフで、モックアップを用意して作り込んだ部位。
GAS TANK
‘71年以降のオイルインフレーム時代のタンクを流用。ボルトオン穴を加工してスピードメーターを埋め込む。
SEAT RAIL
ドロップダウンしたシートレイルとフェンダーはワンオフ。その下の電装ボックスにバッテリー等をまとめる。
FOOT CONTROL
ペダル位置はオーナーの足のサイズに合わせて調整。フットペグには視認性良好なウインカーが埋め込まれる。
MUFFLER
ビート製エキパイを使い、エンドはモーターガレージグッズ製のリバースコーン。チェーンもブラックに換装。
SKETCH
全体像はおろか各ディテイルもオーナーの手によりスケッチング。製作前にはモックアップも用意された。
BUILDER’S VOICE
MICKEY CYCLE
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