
H-D FL 1954
WCREST
景色を一変する
縄文時代の果実
日本海側の絶対者として知る人ぞ知る存在である。最近こそカスタムショーへの出展は鳴りをひそめるが、ひとたび全重心をかけて挑んだショーバイクの輝きは他を圧倒するものがある。
その過去作の中で、今もなお存在感になんらかげりを見せないのがこの一台だ。

さかのぼること11年前に仕上げたマシンである。イメージしたのは古代の縄文時代で、コンセプトネームには『倭(やまと)』の名が与えられた。そしてその基軸とした古代のソースは、オリジナルのディガースタイルへと落とし込まれている。
「まあタンクが一番分かりやすいんやけど、縄文土器の雰囲気を取り入れてディガーに合うカタチに作っとる。でもちょっと分かりづらいよね知らない人からしたら。まあ土器からイメージもらって作ったっていうさ」

聞いた途端、はっとするような衝撃がある。斎藤さん自身の解釈で造形した美なるプロダクトもさることながら、その意外な角度からのデザインソースが新鮮な感動をもって眼前の景色を一変させる。
作り手によって描く世界観はさまざまだが、縄文時代との邂逅(かいこう)はなかなかに前例がない。

さて、肝要の作り物である。ディガースタイルとのあんばいが良いプリズミックタンクは当然一品ものだが、エッジを立てたリブはパテを使った成形ではなくすべて鈑金で処置。
リブ型の三角形をあらかじめ作製しておき、それを3Dでひとつずつ貼っていくという手の込んだ工程を経て造形している。

また、後端のアルミのテールライトボディと一体化したフェンダーステーは刀をイメージして創出。他にもフットステップやシフトノブ、ヘッドライトステーなど、旋盤とサンダーを使い仕上げた箇所が艶やかに躍動。
しかしそれらの主張の強いディテイル群は決してひとり歩きせず、前後21/19インチからなるオリジナルのディガースタイルと渾然一体となることでそれぞれの鮮麗を増している。

「まあ代表作のひとつというかさ、やっぱりこういうのがショーに持っていくバイクだよね。結局全部のパーツ作るのが大変やったし。タンクなんて1週間ではなかなかできんかったかな。それぐらいかかるよ(笑)」
斎藤さんがショーに持っていくバイクは限られている。そんな中このオリジナルディガーは氏が頑として仕上げたものだ。日本刀を鍛錬するみたいに、これ以上やったら折れて使いものにならないぐらいに鍛えられている。その切れ味は格別に決まっている。
HARLEY-DAVIDSON FL 1954 DETAIL WORK

HANDLE
流れるように絞り込まれたハンドルはディガースタイルのアイデンティティ。ポジションは最良の位置で固定。

FRONT FORK
35φフォークは約4インチほどローダウン。大径ホイールは当初は22だったが21インチへとサイズダウン。

GAS TANK
プリズミックタイプの片鱗はあるが完全オリジナルの造形。リブはパテ成形ではなくすべて鈑金で作製された。

FOOT CONTROL
ステップ周りにも作り手の熱量がそのまま注入される。旋盤とサンダーを駆使して見るも美しく形作られている。

MUFFLER
マフラーはあえてスタンダードなスラッシュカットタイプを。全体のバランスをかんがみたサイズ感で設置。

TAIL LIGHT
テールライトボディはアルミで製作し、刀をモチーフにしたフェンダーステーと一体化。曲線ラインを基調とする。
BUILDER’S VOICE
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