H-D FLH 1971
POWERS MOTOR CYCLE

餅肌に祈りをささげる
皇帝のキリングタイム

一見、大味な店主ではある。竹を割ったようなスパッとした性格でありながらしかし一方では、細かい部分にまで目を配る繊細さも備えている。主人の川崎さんの根底にあるのは開けっぴろげな人間味で、だからこそ時に鋭い言辞を突き刺されてもそれが決定打には到底ならないまろみがある。

チョッパーを作らせればいつだって外しはない。手の込んだ煌びやかなショーバイクとは対極に位置する同店のチョッパーだが、このワイルドサイドなストリートの香りにくすぐられる同士は多い。

用意周到なパーツチョイスもなければ一球入魂的な作り込みもない。あるのは作り手の感性と連動した、がらっぱちなお洒落エンペラーなチョッパースタイルだ。

ちなみに、ここで「お洒落エンペラーって？」的な愚問はいただけない。なにせ質問を投げかけた時の川崎さんの返答がそれで、要はこちらも理解しているわけではない。ただその言葉の持つ響きや雰囲気といったものを茶化して放った言葉がそれで、その瞬時に繰り出す笑える語呂遊びが氏のフェイキースタンスだ。

「タンクは元々お洒落な留め方がしてあったの、フレームの下からなんだよね。きっと前にオサレエンペラーが作ったんだろうね。まあこっちもオサレエンペラーだからさ（笑）」

もっと言えばお洒落ではなく『オサレ』。いかなる会話でもウィットをまぶす作法は氏のお約束だが、肝心のチョッパービルドの方のバランスを取った常とう手段にも変化はない。

当初は自分用にと手をくだしたS&S製アーリーショベルを積んだチョッパーだったそうだが、ある時急に熱が冷めたためエンジンを別の物に載せ換え、ガワだけを使って売り物にしたバイクだと言う。

そしてポイントはガセットプレートを剥がしてスッキリさせたネック周りで、他にAEE製トリプルツリーに合わせた6インチオーバーの41φフォークなど、絞りを効かせた筋肉質なフロントエンドがマッチョな雰囲気を醸し出している。

ライザーもFLH用分割タイプの両端からフランダースのようにもう一式ジョイントさせてワントラップ仕込み、E&L製を思わすワンオフシートにはパイピングの中に金糸を封入してゴージャス感を入手する。

彼はこのチョッパーをオサレエンペラーと呼ぶ。もちろんそんな言葉が市民権を得ることはないだろうし、この先も得てもらっては困るというのはある。でもただひとつ言えるのは、このチョッパーは、どうにもこうにもオサレなエンペラーだということ。

RISERS

FLHなどに付く分割ライザーを使いその両端に更に一式ジョイント。ヘッドライトは高年式のツインカム用。

FRONT FORK

トリプルツリーはナローより僅かに広い名品AEE製。フォークは41φグライドフォークの6インチオーバー。

FRONT BRAKE

ブレーキ一式と、長さもぴったりだったことからアクスルシャフトもヤマハSR用を流用。順良な制動力を確保。

GAS TANK

ヴィンテージのGME製マスタング。既にマウント加工済みだったらしく、曰く、お洒落な留め方だったと話す。

SEAT

当初E&L風のボタンの打ち方をしたシートだったが、物足りなさを感じてパイピングの中に金糸を封入する。

MUFFLER

ソリッドな車格と均整の取れたマフラーはショットガンタイプをブラックアウト。オイルタンクは舟形タイプを。