H-D FXBB 2020
SUNNY-SIDE GARAGE

ドレッシーに浮かび上がる
焼き付いた相思のことだま

世界的バイクメーカーが一堂に会す、「東京モーターサイクルショー」での出展を聞いた時には軽い驚きがあった。それは、どちらかと言えばカスタムバイクショーでのイメージがあったからだが、そもそもその先入観からしてつまずいていた。『サニーサイドガレージ』の須川さんにしてみれば発表の場を制限するつもりはなく、単に最も適した舞台で翼をくつろげるだけのことである。

出展ブースは上級サスペンションメーカー『オーリンズ』からで、その一角を拝借してのディスプレイだった。車両は2020年式FXBBストリートボブ。これは同店をよく知るファンにとっては意外な、鮮やかなカラーリングがポイントのマシンである。

「今年一発目でカラーリングを派手めにしてみたんです。まあバえるように（笑）。あと機能性としては、いつものように本来バイクが持ってるポテンシャルをうまく引き出してあげるような感じで作ってます」

まず、倒立タイプのオーリンズ製フロントフォークはそのままでは弾性がソフトなため、スプリングとオイルを交換。油面を調整した上でセットした。またリアサスに関しては、少しレーシーに走ろうとした場合、スプリングがスタンダードのままでは若干柔らかい。そこで国産メーカーの物からスプリングを流用してバネレートを高めている。

「あとリアサスはエンドアイを換えてどんどん伸ばしていって、ブロックも噛ませて車高を上げてます。ハーレーはバンク角が全くないですからそれを稼ぐためにはお尻を上げていくしかないですね」

一方、前後ホイールはBSTのカーボン製を選択。リアのみ16から17インチに変更するが、これは履きたいタイヤを装着するためのもの。カスタムシーンでは一般的な「ホイールありきのタイヤ」ではなく、真逆の発想で氏はこれまでモディファイを進めてきた。それは何より『走り』を最優先に捉えているためだ。

「リア17インチで5.5J以上の幅のホイールを付けることでスーパースポーツ用のタイヤがなんでも履けるようになる。それでウチは履きたいタイヤでホイールサイズを決めてます」

手を尽くしてポテンシャルを引き出される側もきっと嬉しいはずだ。どのオートバイもこんな大人と出会いたいに違いない。そして、気づいたことがある。予感と呼ぶにはあやふやだし、理由を説明するのも難しい。でも、たしかに、針で刺すようなくっきりとした感触がある。須川さんは手掛けるオートバイたちに愛されている。たぶん。

（写真／山田健太郎）

FRONT FORK

オーリンズ製倒立フォークはスプリングとオイルを換えて油面調整。カウルは独国サンダーバイク製となる。

FRONT WHEEL

BSTカーボンホイールに、ディスクローターのアウターはサンスターでインナーはミスミエンジニアリング製。

GAS TANK

ショー映えする派手やかなペイントは初の試みとのこと。塗装はシェイキンスピードグラフィックスに依頼。

MUFFLER

オリジナルで開発したチタンマフラー。総重量は約4kgで、マフラー出力とバネ下重量の軽量化による効果も発揮。

REAR FENDER

オリジナルのドライカーボンフェンダーを装着。リアサスはオーリンズ製で車高を上げてバンク角を確保する。

REAR WHEEL

BST17インチホイールにブリヂストンT32タイヤをセット。スイングアームは自社開発のオリジナルパーツ。