HARLEY-DAVIDSON EL 1947
POWERS MOTOR CYCLE
ストライクを取りに来ない
ハッタリ変化球ビルダー
どこまでが本当の話しで、どこからが冗談なのか。慣れないとその辺のサジ加減が分からない人だ。
茨城県古河市でパワーズモーターサイクルを営む川崎さんがその人で、例えるなら、あらゆる角度からトリッキーなボールを投げてくるピッチャーのようだ。コントロールが良いにも関わらず敢えて軌道を外してバッターの様子を楽しむような。正統派ではなく異端、そんなイメージだ。
得意なカスタムスタイルは、直球のチョッパー。トリッキーな会話を楽しむ一方で、作るバイクは変化球無しの一本筋の通ったものである。
2015年のヨコハマ・ホットロッドカスタムショーに出展した1947年ELベースのナックルヘッド。コンパクトにまとめられたフォルムは見るからに乗りやすそうだ。曰く、やり過ぎずやらなさ過ぎないカスタムとのこと。
まずエンジンだが、クランクケースはS&S製に換えられた。これはケースの左側、スプロケットシャフトを入れるシール部分がダメだったためで、中のフライホイールにはELではなくUL製を選択。コンロッドはFL製となっている。イチから組んだというエンジン排気量はだいたい1260ccぐらいだそうだ。
外装の中でも手間のかかったパートはフレームである。言われないと分かり難いが、ネック周りをわずかにストレッチさせて、やり過ぎずに程良く伸びたフロントエンドを形成。33.4φのアイアンスポーツ用フォークは8インチオーバーとされた。
そして、前後ホイール径は21/18インチとし、その理由を聞けば「最近流行っているから」とピシャリ。気持ち良いほどにあっさりした返答だ。他にタンクやシーシーバーなどからも、パワーズのショップカラーを見ることが出来る。
タンクは全体のバランスを見て一番馴染む位置にマウント。トンネル部分を少し深くとり、ガソリンコックの位置を下側に移動。これはガソリンを目一杯使いきれるように多くのビルダーが加える処理だ。そして、クリームカラーにひと際映えるグラフィックを、北関東をメインに活動するIZUMIがペイント。躍動的な絵のエッセンスがマシンにも息づいているかのようである。
特別、細かな作り込みで周りをあっと言わせる訳では無い。『直球のチョッパー』をいつものように、いつものやり方でやっているだけである。最後に、そんな川崎さんにカスタムする上で気を付けている点を尋ねてみた。
「気を付けている点? なんだろう……。手間隙かかっているようでかかっていないところ。手間イコールお金だから、いっぱい抜けるように頑張る(笑)。凄いでしょ、かかってないのにかかってるように見せるんだから」
それがハッタリなのは百も承知。普通にストライクを取りに来れば良いのに相変らずトリッキーなボールを投げてくるもんだから、こっちはまったくもってバットを振れない。
HARLEY-DAVIDSON EL 1947 DETAIL WORK
HANDLE
ゆったりとしたポジションを生む、ハイライザーと手前に大きくベントしたプルバックハンドルの組み合わせ。
FRONT WHEEL
アイアン用の純正21インチホイールに通称ハンバーガードラムブレーキの付くソリッドなフロント周り。
GAS TANK
ペインター冥利に尽きる白いキャンバスでのIZUMIによるペイントワーク。ガスコックは下部に移行された。
SEAT
肉厚のコブラシート。シート厚を薄くするよりもこの手のチョッパーにはこれぐらいのボリュームがジャスト。
FOOT CONTROL
フットシフトはスーサイドタイプ。ステップのステーは2本の丸棒を使い丁寧に処理され、フレームに固定。
MUFFLER
ポーカーパイプのダウンマフラー。同店で繰り返し行っているセットアップなだけに装着方法も慣れたものだ。
BUILDER’S VOICE
POWERS MOTOR CYCLE
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