H-D FXS 1980
JESUS CYCLES
往年の名車たちに着想を得た
欧州の風を漂わせるカスタム
清涼感あるブルーをまとったショベルヘッドカスタム。今年3月に熊本にて開催された『ヒルズマーケット』に出展され、バイブズマガジンPickも受賞したマシンである。製作したのはジーザスサイクルスだ。
ベースはほぼオリジナル状態だったFXS。オーナーからの注文は「水色で」という外装色の指定のみ。その他の仕様はビルダー木下さんに一任された。
今回のカスタムで興味深いところは、随所にヒストリカルな名車のエッセンスが散りばめられている点だ。
例えばタンク周り。一見スポーツスタータンクのようで、しかしよく見れば、タンク上部の直線的なライン、また側面から見た際の前部のなだらかな曲線など、その造形は似て非なるものであることに気づくだろう。
「お客さんとタンクの造形を打ち合わせたときに、インディアン・チーフのタンクを仮に載せてみたんです。お客さんがそれを気に入ってくれたので、そのスタイルを参考にしてワンオフでタンクを作りました」と、木下さん。
タンクのトップにあるパネルもまた、このマシンを語る上で非常に印象的なパートだ。こちらは英車ARIELの’30年代に生産されたモデルから着想を得ているという。実際にARIELを所有している知人を訪ね、その形状や造りを探究。特にタンクとパネルのクリアランスや、パネルをいかに薄く作るかなど熟慮が重ねられた。
「タンク側のエッジを少し立ててやって、その上にパネルをかぶせることで雨が入らないし、隙間も目立たなくなるんです。メーターを埋めたパネルをできるだけ薄くするために、タンク側はかなり加工していますね」
リアフェンダー周りも注目だ。フェンダーやループの作りには、どこか欧州車のテイストを感じさせるものがある。「’60年代のドカティがこんなデザインなんです。ちょっとライトな感じにしたくて参考にしましたね」。
なんとも多国籍なアイデアが満載された一台。木下さんの引き出しの多さ、そしてそれらの要素をバランスよく配し、違和感を与えない平衡感覚に驚かされた。
「アメリカにアメリカを重ねるんじゃなくて、今回は英車とかドカとか、欧州車の雰囲気を入れてみたかったんです。僕はハーレー以外も、なんでも好きですからね」
1960’sトライアンフの純正色『シェル・ブルー』で彩られた、無二の存在感を漂わせるショベルヘッド。柔和な木下さんらしい、ジーザスらしいマシンだと感じるのは、私だけではないはずだ。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON FXS 1980 DETAIL WORK
TANK PANEL
タンクパネルにはモトガジェットのメーターとワンオフのタンクキャップ、そしてメインスイッチを配している。
CARBURETOR
キャブはSU。エアクリーナーはFORK製。さりげに入るH-Dロゴは純正キャリパーに付いているものを使用。
HAND SHIFT
操作性を考慮し、シフターはハンドルから近いタンクシフトに。タンクとレバーのクリアランスが絶妙だ。
SEAT
シートは真鍮ネジで留められており、工具を用いずに外してシート下のバッテリーなどにアクセスできる仕様。
MUFFLER
木下さん自身初めて製作したというサイレンサー。エキパイの軌道は’50年代のモデルKを参考にしたという。
TAIL LAMP
旋盤で製作したワンオフテールランプ。本体はパーカライズド処理されマットな質感を醸す。レンズはルーカス。
BUILDER’S VOICE
JESUS CYCLES
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電話 | 0968-68-5056 |
FAX | 0968-68-5056 |
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