H-D FL 1980
YOSSY’S MOTORCYCLES

サーキットに浮かぶ
ストリートバイクの幻影

遊園地のメリーゴーラウンドは、回転する速度を徐々に落として、余韻も残さずにぴたりと停止する。だからすぐにでも、もう一度乗りたい。もう一度見たいという気持ちが湧き出てきたものだ。

『ヨッシーズモーターサイクル』のマシンを前にすると、不思議とそんな淡い記憶が蘇ってくる。今回はどんな姿のカスタムを作ったんだろう。毎度のまとまったシルエットには、勘所を押さえた趣（おもむき）がある。

‘80年式FLがベースのショベルヘッドは、峠を気持ちよく走れるイメージで仕上げたものだと、作り手の白井さんは言う。レーサーのテイストを組み入れたストリートバイク。10代の頃に山を走っていた氏の体験がすーっと、違和感なく染み通っている。

製作していく上で気を付けたのは、あまりやり過ぎないことだったそうだ。前後にアルミホイールを使いつつもフォークは純正を採用するなど、通常チェリアーニ製といった同じアルミ材の高価パーツで合わせがちな箇所を改変。一方、リアエンドのデザインにも同店固有の快味が見て取れる。

一つ目に、カスタムバイクには嫌われるツーリング用キャリアだが、それを首尾よくナンバーブラケットを兼ねた造作で一体化。排除するのではなく、活かすためにはどうするかに思考を巡らせカタチにしている。

二つ目がテールランプを覆うデザインで、曰く、’90年代のハイテクのホットロッドのイメージかもしれないと屈託がない。単純にランプを目立たせたくなかったとのことで、難しいことを考えずに手を動かしていった末の完成形である。

「本当にその時の自分の中の旬でやってますけどね（笑）。ちょうどこういう感じのものを作りたかったんです。オーナーさんが普段通る道もカーブが多いものですから、おのずとスポーツタイプのハーレーも良いなと思ってやらせて頂いた感じですかね」

前後21／18インチホイールはポリッシュリムをこすって光沢を抑え、センターのみ’80年代のバイクを想起してガンメタで塗装。外装のカラフルなカラーリングもその年代に照準を絞ったもので、タンクに描かれたレタリングがまた当時の空気感を増している。

「サーキットには行かないと思うけど、ツーリング用ブラケットを外してゼッケンさえ付ければそのままレースに出れるようなマシン」

思わず往年の甲高いエキゾーストノートがフラッシュバックする。作り手のイメージがクリアなだけに、そこから響く景色もきらやかだ。

FRONT FORK

やり過ぎないをテーマに、フロントフォークには純正を採用。レーシーなメーター周りも同じく純正を流用。

FRONT WHEEL

社外のアルミホイールはポリッシュリムをこすり、中央部をガンメタ塗装。キャリパーは純正を加工して装着。

GAS TANK

ガスタンク中央のスイッチ類は上からNランプ、ウインカー、ホーン。レタリングはオーナーのニックネーム。

MUFFLER

レーシーな雰囲気を出すマフラー。サイレンサーはネオファクトリー製で、マウントステーの作りも抜かりない。

NUMBER BRACKET

ツーリング用キャリアを兼ねたナンバーブラケット。カスタムマシンにも抵抗なく同化するデザインで製作。

REAR FENDER

テールランプを目立たせないようホットロッドを念頭に置いて造作。共通したスロッテッドはステーにも入る。