H-D FL 1969
LUCIFER CHOPPERS SANCTUARY
敬意から踏み出す
ビルダーの呼吸
ロングフォークチョッパーを触らせれば国内随一。幾多の腕に覚えのあるチョッパービルダーがしのぎを削るこのジャンルにおいて、不世出の輝きを見せるのが福島の『ルシファー』。ビルダー中澤さんの産み出すチョッパーは毎回底が知れない。
今回は前衛的なカスタムで知られる米国ミシガン州のチョッパービルダー、『ロンフィンチ』のニュアンスを取り入れた一台だと言う。このド級のフロントフォークはそこから来ているが、ただリメイクしたのでは面白くないため氏の妙案をもってブラッシュアップされている。
「オーナーさんと話して、今までやったことが無い感じでやってみましょうという感じでした。1本スプリングの位置がフィンチのだと中途半端な場所だし、見た人に『ああフィンチね』って思われるのも嫌だったのでギリギリまで下に下げて差別化してます」
ワンオフのフォークは頼りにする外注業者へ旋盤作業を依頼。溝の幅や深さをすべて指定して上がって来たものに、次はスプリングを配置。今回はダブルよりも当然負荷がかかるシングルだというのを念頭に置いてバネ留めプレートの位置を考察。そこを決めた後にフロントレッグを合わせている。
そして、威容を誇ったフレームワークだ。ガスタンクやフェンダーといった基本構成に手抜かりはなく、フレームダウンチューブやフレームエンドの下側に施したメタルシュラウドで効果を最大化。ロングフォークチョッパーをもうひとつ高い美的次元へと引き立てている。
「別に大げさなことじゃないです。これは鉄板の切り貼りですよ。まあ塗装面を出来るだけ増やした方がバイクもそれっぽく見えるんじゃないかなってことで作った部分です。丸棒やってそこに鉄板貼ってみたいな」
小ぶりなスポーツタンクは昔のオーソドックスなイメージから造形した箇所で、リアフェンダーも同様だがエンドには鉄球をアクセントに加えている。そしてこれは、シッシーバーの頂点にも見られる同一のデザインで、着想はフィンチテールから来ているそうだ。
「ぽつぽつ付いてる丸いのはそうです。まあフィンチのテイストを盛り込んだ古くさいロングフォークチョッパーっていう感じですかね」
背景にあるチョッパーカルチャーへの確かな見識をものの見事に吸い上げて、ふーっとひと息に自分の思い描いた景色へと変えてしまう才覚。一筋縄ではいかない多様なチョッパー乗りを抱えるビルダーの晩餐は、相も変わらずに贅が尽くされている。
HARLEY-DAVIDSON FL 1969 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォーク下側に1本スプリングを配したフォークは旋盤作業で等間隔に溝が入れられる。ホイールもワンオフ。
GAS TANK
スポーツタンクを装着。メッキの上にのるブルーのグラフィックは元々のもので、それに合わせて全体を塗装。
DOWN TUBE
ダウンチューブに塗装面積を稼ぐためシュラウドを造作。丸棒でアウトラインを取り、そこに鉄板を貼って成形。
MUFFLER
バンプデザインのアップマフラー。スイングアーム下側には同じくシュラウドを取り付けて塗装面積を確保する。
REAR FENDER
フェンダーの端はご覧のデザインで切れ込み、先端には鉄球を付加。フレイムスの入るシートも単一で製作。
SISSY BAR
テールライトはロンフィンチ製でこの鉄球の造形に合わせてシッシーバーなどのディテイルが統一化された。
OWNER’S VOICE
LUCIFER CHOPPERS SANCTUARY
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