
H-D EVOLUTION 1986
Barn field
その佇まいに個性を見る
出雲のボタニカルチョッパー
風光明媚な山陰の町、島根県出雲市。穏やかな空気漂う田園地帯を走っていると不意に視界に現れた、同県唯一のカスタムショップ『バーンフィールド』。
SRを中心とした国産車、そしてハーレーを主幹に黙々とレンチを奮うのは店主でビルダーの宅和さんで、10代から溶接一辺倒。鉄とバイクのスペシャリストとして地元で知られた存在だ。
十分なスペースが確保されたファクトリーに製作途中のロングフォークなどラジカルなチョッパーが並ぶ同店だが、宅和さんのフェイバリットは少し異なるという。
「個人的には低いバイクが好きなんです。まさにこのバイクみたいな、シルエットが低いバイクですね」
さて、このマシン。カスタムのきっかけは、オーナーがヤフオクで買ったマシンを持ち込んで来たことだった。「ぶっ壊れたってことで修理で預かったんですけど、外装も当時は変なのが付いてて(笑)。じゃあ作り替えよっかってことでカスタムを始めた感じですね」。
グースネックのリジッドフレームに74スプリンガーという、持ち込まれた当初の骨格は残しつつも、その他のセクションは一新。そのディテイルはこうだ。
まず誰しもが目を止めるのは、鮮やかなターコイズブルー系のペイントワークだろう。この塗装を手掛けたのは、誰あろう宅和さん本人。
四輪にハマっていた若かりし頃に鈑金屋に出入りし、見よう見まねで始めた自家塗装。そのスキルはブラッシュアップを重ね、現在では顧客のマシンはほとんど自らの手で塗っているほどだ。
単色ではなく、差し色となるシルバーのライン、そしてエイジングが施されているのが分かる。ザラっとした粗野な質感は、クリアの吹き方に秘訣があるのだそうだ。
タンクはニュースクール系のストレッチタンクをリメイク。ストレッチ感は残しつつ、幅を詰める加工を施し、メインチューブ上の絶妙な高さにマウントした。
リアセクションには宅和さんの個性がよく現れている。特にサイクルフェンダーをホールドするフェンダーブレースは、曲線を多用した有機的なデザインに。
「こういうノリが好きなんです」とは宅和さんの弁。こういった『造りモノ』に氏の表現力を垣間見る。マフラーも同様だ。その軌道やエンド部の作り込みはオリジナルのスタイルを呈している。
かくして変身を遂げたエボリューション。その類を見ない佇まいに、はたして出雲の秘蔵ビルダーが次に何を造るのか……その興味を禁じ得ない。
(写真・文/マツモトカズオ)
HARLEY-DAVIDSON EVOLUTION 1986 DETAIL WORK
HANDLE
コントローラブルな印象のライザーとハンドルはオーナーの持ち込みパーツ。グリップはIKワークス製を選択。
GAS TANK
程よいヤレ感がエイジングで表現されたタンク。マットな質感が絶妙だ。左サイドにはフューエルゲージを配す。
SEAT
シートは宅和さんのデザイン。シートのデザインは苦手だと笑うが、その個性的な造形に氏のセンスが薫る。
FOOT CONTROL
操作系はミッドコン&スーサイドに。シフターにはオーナーが留学していたオーストラリアのコインを埋め込む。
MUFFLER
穴の空いたパワーボム然としたパイプはオーナー持ち込みのパーツ。オーバルのマフラーエンドが個性を放つ。
FENDER STAY
どこか有機的で流麗なデザインが特徴的なフェンダーブレース。発想の元は蔦などの植物だと聞いて納得する。
Barn field
住所 | 島根県出雲市斐川町出西3755-1 |
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電話 | 080-4266-0131 |
SHOP | Barn fieldのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 20:00 |
定休日 | 月曜日 |