H-D FXSTC 1988
D-club Custom Ranch
地を這う爆撃機
異色のボバースタイル
かなり小さな燃料貯蔵庫。容量はわずか3リットルと、ミニマルなガスタンクだ。すべては低いシルエットを作り出すためという意思のもとに削ぎ取られた。それでいて、デザイン的な存在感はあるのだから不思議だ。
鳥取県の『ディークラブカスタムランチ』が手がけた地を這うほど低いボバーは、’88年式のFXSTCがベースとなっている。
「オーナーから、全高の低いバイクを作りたいとリクエストがありました。とにかく低く、低くと。ハンドルバーもすごい変わった形ですが、低いバイクを作った結果このデザインになったんです」
フロントタイヤを16インチに変更し、もはやソフテイルストックの原形を留めないシルエットとなったロースタイルなボバーの左後方には、尾翼の備わる爆弾が突き刺さっているのがよく目立つ。
「あれは予備タンクです。メインタンクがロートンネル仕様なので、ガソリンはいくらも入らないんです。だからメインが空になったら燃料ポンプで予備タンクから電動モーターでガソリンを送られるようになっている、クルマ用のシステムです」
オールドスクールな、ハーレーカスタムにはない異例の発想。ニュースクールのロングチョッパーやアメ車に明るい老舗ハーレーショップだからこそのアイデアだ。
その燃料供給システムは、以前から行なっているカスタムの常套手段だという。しかもメインタンクより、リザーバータンクの方が大きい。すべては目的とした意匠を完結するため。
同店が得意とするのはパウダーコート。このボバーにもその特殊技術がふんだんにあしらわれている。
「ガスタンクとフェンダー以外の塗装は、すべてパウダーコートです。フレームまわりは5分艶のブラック、エンジンロッカーとボックスはリンクル。それ以外の色はバーントブロンズです」
バーントブロンズとは聞き慣れない色彩名称だが、焦げた銅色という意味だという。名称以上に独特な色合いが、シックなアクセントカラーになっている。多彩なカラー、多様な表面仕上げ、パウダーを自由自在に操り、さらに造形工作が加わることで独自性のあるカスタムが誕生する。
股下をくぐり抜けることができそうなほどロースタイルな今回のボバーも、千態万状(せんたいばんじょう)な表現力の一角。
一方で、マットブラックにゴールドリーフ仕上げのガスタンクは、オーナー自ら塗装したものだそうだ。表現力に長けたショップには、才能豊かなオーナーも集うということだろうか。
(文/野上真一)
HARLEY-DAVIDSON FXSTC 1988 DETAIL WORK
HANDLE
極めて低いポジションを求めた結果、スワローバーともまた違う独特な形状のコンチネンタルバーが誕生した。
FRONT FORK
現状はベース車両についていたフロントフォークが装着されるが、今後はスプリンガーに換装と進化を止めない。
ENGINE PAINT
Dクラブのパウダー技術を垣間見ることができるエンジン。カラーの種類、質感など幾多の技巧が施されている。
PRIMARY
軽量化と強靱化を求めるドラッグレースの仕様に起源を持つオープンプライマリー。BDL3インチキットを装着。
REAR END
パウダー塗装されたマフラーエンド、キャリパー、フェンダーステーなど。カラーは存在感のあるバーントブロンズ。
RESERVOIR TANK
無二のシルエットを生み出す礎となるリザーバータンク。これにより極小のガスタンクでも安心のライドとなる。
BUILDER’S VOICE
D-club Custom Ranch
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