H-D FLH 1968
MAD LOUT MOTORCYCLE
許されたフィールドに立つ
矛盾のカウンターブルース
イメージをカタチにしていく作業はことのほか難解だ。しかもそれが自分ではなく他人の子細な意見だとしたら、そのハードルは今までの草レベルから一気に選手権クラスにまで跳ね上がってしまう。
人の想いを託されたその瞬間から、そこは誰もが気軽に汗して競う場ではなくなり、それ相応の人間だけが資格を得た聖なるフィールドになる。そして相手の万感の想いはそのまま会場の声援となって、作り手へのプレッシャーとラブコールに姿を変えてゆく。
オーナーのイメージのままに製作したチョッパーだと、作り手の住友さんは言う。すべてをオーナーに任せて、その頭の中にあるものを作ったものだそうだ。この相手の趣味嗜好を想像して製作していく工程は、いつものごとくに手掛けるカスタムとは勝手が違う分難易度も高い。
「まあこれが2台目なんで、1台目乗ってる時の対話とかでだいたいこういうのが好きだろうみたいなんは分かってくるんでそれを入れ込みながら。あと僕が一番気を付けたのは綺麗に作りすぎないことでしたね」
ネタ元になったのはチョッパー専科『RIPPER MAGAZINE』で特集されていたデスバレーラン。そこに出てくるリアルなチョッパーをソースとしてこのアーリーショベルは組み立てられていったが、やはりネックになるのは先の、綺麗に処理しないこと。
プロショップゆえ、当然美しい仕上げを本望とするが、今回はそれとは真逆のガレージビルド感を出した雑なフィニッシュが主体である。この普段の仕事とは矛盾する始末が、氏の腕の見せ所だろう。
「どうしても真面目にやると綺麗に作りすぎちゃうんで、したら日本人感がやっぱ出るんですよね。それをどれだけ崩すかっていうのが難しかったですね」
米国のガレージビルダー固有の絶妙な雑さを出すために出来るだけワンオフパーツは避け、全体を汎用品で構成。前後19/16インチホイールにストックフォークは8インチ延長され、タンクやフェンダーなどに新品パーツも気兼ねなく使うが、神戸のアオゾラワークスによるエイジングペイントの決着で会心の風合いを入手した。
武器はあるけど使わない。敢えてプロフェッショナルの鈑金スキルを封印した上で、オーナーの希望に忠実に。
そして、相手の想いを汲み取る心理面や、よりベターな先見の提案で本領を発揮する。こうした想像を膨らませ、相手のマトリクスに交信する術も、実戦での手わざ同様に徳のある作り手には不可避な一芸である。
HARLEY-DAVIDSON FLH 1968 DETAIL WORK
HANDLE
ライザー&ドラッグバーは汎用品を選択。ヘッドライトのサイドマウントはオーナーのリクエストにより装着。
FRONT FORK
フォークはストックのFLH用を使用。インナーチューブを8インチ伸ばしわずかにロングフォーク化された。
GAS TANK
一見ヴィンテージ風に見えるがこちらも汎用ピーナツタイプ。エイジングペイントはアオゾラワークスが担当。
PRIMARY DRIVE
一次駆動は荒々しい様相のオープンチェーン仕様。クラッチはLEE製でシフトロッド部分にもチェーンを用いる。
MUFFLER
快活なエキゾーストノートを吐き出すマフラーはパウコ製スラッシュカット。王道のパーツチョイスで軍装。
REAR END
市販のリアフェンダーにステーはワンオフで製作。上下2連のテールウインカーはブレーキ/常灯ランプとなる。
BUILDER’S VOICE
MAD LOUT MOTORCYCLE
住所 | 徳島県吉野川市山川町湯立239-1 |
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FAX | 088-342-4340 |
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