YAMAHA SR400 1993
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
つやを脱ぎ捨てた
防弾のモノローグ
主人の加藤さんは人徳のある人だ。日本人が連綿と持ち続ける大切なものを、しっかりと備えた人だ。それはちょっとした所作にはじまり、筋の通った思考や、相手の意向をくみ取った身ごなしに隠しようもなく現れている。
おそらく本人は気付いていないだろうが、それがどれだけ魅力的かはこのショップに足を運ぶ人の流れを見れば分かる。尊敬のあまり距離感が遠くなるのではなく、その距離は逆に近く、しかしそこには当事者だけの凛と襟をただした信頼関係がはぐくまれている。
そんな同店固有の作法をもって差配されたSR400は、過去に製作した1台をオーナーが気に入ったことから始まったもの。それと似た雰囲気で作って欲しいというオーダーを受けて、同様のスプリンガーフォークが装着された。
「フレームとガソリンタンクがポイントですかね。他にもあるんですけど、やはり目が行く箇所はここだと思います。タンクのデザインはオーナーさんと何回もペンで落書きしながらだいぶ悩んで決めたものです」
まず、フレームはSRの泣き所でもあるオイルインメインチューブをモディファイ。見栄えよく細身に骨格を変化させ、同時にネック周りをスッキリと一新。また6インチオーバーのスプリンガーフォークとバランスするよう、全長は純正に比べて後方部が約12cmほどエクステンドされている。
そして、タンクは何度も話し合ったデザインをもとに具象化されるが、丸棒を溶接して表現したフレイムスラインの内側にパテを装填。フレイムスが立体的に浮き上がって見えるよう細工がほどこされ、リアフェンダーは『ザ・ワック』を象徴するエンドを跳ね上げた造形とされた。
このリアフェンダーは実は結構手間のかかるパートで、既成のフェンダー後方に幾数もの切れ目を入れてそこをクッと上に持ち上げ成形し、溶接で綺麗にならして仕上げた部位である。
それ以外にも、オーナーの希望通りに完璧なポジションを用意したハイフォワードコントロールや、ツイストを入れながら描出した偏差値の高いシッシーバーなど、一見つや消しブラックという落ち着いたカラーリングに惑わされるが、その好戦的な作り込みは健在だ。
自分の中でなにか核となる、日本古来の価値観が深く根を下ろした主人が膳立てした一台。「いつものことですけど愛着が湧いちゃうのでお渡しするのが寂しいぐらい」と、ひたおしに大切に手をかけてきたものには、おおよそ大切にされる未来がみずみずしく重なりあう。
YAMAHA SR400 1993 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークは米国より取り寄せた6インチオーバーの74スプリンガー。ほどよいレイク角に合わせてマウント。
GAS TANK
タンク表面にフレイムスデザインで丸棒を溶接。フレイムス内側にパテをあてがい立体的に浮き上がるよう描出。
OIL TANK
オイルインメインチューブの改良によりオイルタンクをシート下にセット。その後方にイグニッションを配置。
FOOT CONTROL
オーナーの要望通りにハイフォワードコントロールを製作。チョッパー特有のライディングポジションを生む。
MUFFLER
リアフェンダーのエンドをカチ上げ、マフラーも単一で創作。アクセントを加えるためエンドに飾りの柄を入れる。
SISSY BAR
ツイストを入れてアレンジしたシッシーバー。すべて手作業でカタチにしたスキルと労力を要したセクション。
BUILDER’S VOICE
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
住所 | 岐阜県関市東田原489-4 |
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電話 | 0575-48-0428 |
FAX | 0575-48-0428 |
SHOP | THE WACK CUSTOM MOTORCYCLEのショップ紹介 |
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定休日 | 月曜日、第2・4日曜日 |