TRIUMPH TR6 1972
HEIWA MOTORCYCLE
スタンドプレーのない
連続する永久欠番への宴
ある一定の水準を超えた作り手になると、技術力は言うまでもなく、感性がものを言う場合が多い。世界に名だたる『平和』の木村さんも例外ではなく、細かいディテイルを追うほどに緻密な作業の痕跡が見て取れる。
しかし、それらは前面に出ることなく、あくまでひっそりと車体を構成するいち要素としてなりを潜め、全体を覆うのは作り手のたおやかな美感である。
「いつもの雰囲気を出しつつレーシーな感じですね。まあウチでやってるのはディテイルの部分を細部までこだわって、しっかり塗装もしてトータル的に色味も含めてバランス良くなるように考えて作ってます」
そして、同店が重点を置く『水平ライン』を基調とした低めのポジションを念頭にしてカスタムは始動。すべての箇所に指紋の跡が残るかのフルスクラッチの一台は、まずアルミ材を使い外装が構築されてゆく。
ガスタンクとシートカウルはアルミ板を叩きだして成形したものだが、タンク下部を良く見るとそこだけ銀色のブラケットがあるのが分かる。
これは前後のフレームマウントを兼ねたもので、最初にガスタンクと固定した後にこのブラケットをフレームへと固定。デザイン的にごく控えめに主張する部分だがその効果は絶品。こうした下手に腕を振り回さない一歩引いた妙技はそこかしこに現れる。
次にシート下。外装と同色で塗られたカバーボックスは実はエアクリーナーになっていて、左右それぞれのキャブに随伴して配備。本来ならファンネルやパワーフィルターを使う所を、ここまで丹念に練った造形を用いつつ、違和感なく車体に馴染ませる手並みには舌を巻く。
加えて、その左右エアクリーナーの中央部にオイルタンクが置かれ、そのタンクの内奥にサスペンションが格納。全ての仕事は滞りなく、美しく処理されてゆく。
他にも、オープンプライマリー化したカバーは自然に見えるよう思案した部位で、整備性を良くするため後方部だけ外れるようセパレート仕様にするなど、曰く、「結構うまくいったと思う」と、納得の仕上がりを見せている。
またマフラーもすべてワンオフで、サイレンサーは扇形に切ったものをローラーで曲げて、同じように製作したエキパイと溶接でつなぎ完遂させたものだ。
『平和』のカスタムにこれ見よがしな俗っぽいアピールは見当たらない。すべては全体で見たときの濃度を艶やかに保つためであり、そのためにだけひと目をはばかり、孤独な運動が朝に晩に行われている。
TRIUMPH TR6 1972 DETAIL WORK
FRONT FORK
どこか一カ所ではなくフォークを始めとした全ての箇所を研ぎ澄ましていくことで『平和』スタイルは具象する。
GAS TANK
鉄ではなくアルミを叩き出して製作したガスタンク。下部にはフレームマウントを兼ねたブラケットを用意する。
AIR CLEANER
シート下のカバーボックスはエアクリーナーで左右キャブに随伴。エアクリーナーの内側にオイルタンクを設置。
MUFFLER
サイレンサーとエキパイ共に扇形に切り出したものをそれぞれにローラーで曲げて接合。ヒートガードの意匠も光る。
OPEN PRIMARY
ベルトドライブへの換装にあたりオープン化。カバーは整備性を踏まえて後方で外れるようセパレート仕様に。
SEAT COWL
シートカウルもアルミ板でワンオフ。鉄を使った方がラクなこともあるが特有の厚みや質感からアルミを重用。
BUILDER’S VOICE
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