H-D FXSTC 1998
GRATIA INDUSTRY MOTORCYCLE
ビルダーとユーザー
以心伝心の関係が生む完成形
チョッパーやカスタムバイクに限らず、すべからく“もの創り”というものは発注した顧客と仕事を請け負ったプロ側の関係性が、その完成の姿に大きく影響を与えることがある。たとえば、それを常連客と料理人に置き換えて考えてみると、多くを語らずとも塩加減や味の濃淡も阿吽(あうん)の呼吸というべき絶妙な感じで提供されるのだろうが、カスタムバイクにしても然りだ。
実際、ここに見る一台を前に京都の『グレーシア』のビルダーである曽根さんはこう語る。
「このバイクを製作する上でオーナーとの決めごとはDNAのホイールを使用することとナローなスタイル、色のみだった」と。聞けばこのマシンを発注したオーナーとは個人的に15年来付き合う友人であり、いわば『カスタムの好み』を知り尽くした関係とのこと。
その上で大前提となったのが、まずはDNA製のフロント23インチとリア21インチホイールのコンビネーションなのだが、そのフィニッシュはというと素材であるソフテイルの特徴を存分に活かしたものとなっている点も評価すべきポイントだ。
ちなみにソフテイルといえば、その名のとおり「リジッドに見えて、じつはリアサスを備えた」モデルであることを今更説明する必要はないだろうが、その開発の逸話に『カスタム』が大きく関わっていることはきっとマニアなら知るところだろう。
1981年、米国ミズーリ州のセントルイス・モーターサイクルに勤務し、後にロードワークス社を設立したビル・デイビスが『サブ・ショック』という名で生み出したこの画期的なカスタムフレームの権利をH-D社が買い上げ、1984年にEVOソフテイルが登場したことは知る人ぞ知る事実なのだが、その素材を前に『グレーシア』ではワンオフパーツを多用し、オーナーの要望どおりにこのマシンを製作。
カワサキからハーレーのスポーツスターと車歴を重ね、乗り継いできた友人に向け、曽根亜希夫という人物が振るった技の数々は、ご覧のとおりシンプルなソフテイルのスタイルを更に際立たせるものとなっている。これをシェフのスペシャリティに例えるのなら「おまかせ」だからこそ成せる妙技だ。
顧客の細かな要望に従属して応えるのではなく、友人として以心伝心で生み出した高い完成度……やはりカスタムという創造物に於いては濃密な「人間関係」も重要、か。
(文/渡辺まこと)
HARLEY-DAVIDSON FXSTC 1998 DETAIL WORK
FRONT FORK
フロントはφ39フォークとSM製ミッドワイド・トリプルのコンビ。ライトは5-3/4″サイズの汎用品とのこと。
FRONT WHEEL
オーナーたっての希望によりFホイールはDNA製マンモス23″をセット。マシンの個性を決定付けるパーツだ。
GAS TANK
タンクは3.3ガロンタイプのスポーツスター用をナロー加工し製作。ハンドル&グリップもワンオフとのこと。
PRIMARY
プライマリーはBDL製2インチオープン。ステップおよびペグ類、シフトノブはすべてグレーシア製ワンオフ。
MUFFLER
マフラーは耐腐食性に優れたステンレス製ワンオフ。キーシリンダー横の彫金は曽根さんの手によるもの。
REAR BRAKE & WHEELS
リアはDNAマンモスの21″ホイール。あえての130幅でナローなスタイルに貢献する。ブレーキはブレンボ製。
BUILDER’S VOICE
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