H-D PANHEAD 1953
SPIKE CHOPPERS
日本海側を張る
恵まれし黒い手
国内において、誉れ高いロングフォークチョッパー屋は数少ない。いったいなぜか。それはシンプルに、既存の『層』が厚すぎるからに尽きるだろう。東北宮城県の『ワイルドロードチョッパーズ』を始めとした、歴戦のチョッパービルダーたちによるアーティスティックな上作は、新参者がうかつに足を踏み入れる余地がまったくないほどに卓抜(たくばつ)したものだ。
その中において、日本海側で名声を誇るのが新潟の『スパイクチョッパーズ』である。めっぽうハイレベルなショップが割拠する日本のロングフォークチョッパーシーンにあって、抜群の破壊力を持った当主が率いる本陣がそこにある。
「これは俺がやりたいようにやった感じかな。どこかって? まあフレームからのモールディングか。でシッシーバーの長さか。あとはフロントフォークってとこかな。だいたいモールディングだよね」
市販パーツを使わずに、ほとんどの箇所をワンメイクで構成していくのがスパイク流だ。自分がイメージする物が無いから作るのではなく、最初から『何でも作る』ありきが基本スタンス。なので、他を寄せ付けないただならない空気感が漂うのは、それが手作業の集大成であるのと同時に、そこに作り手金子さんの鬼気迫るかの狂奔(きょうほん)が宿っているからだ。
フレームワークからして見応え潤沢だが、何よりダウンチューブトップの『かえし』がキモだろう。普通だったら直線的なラインで構築するところを、ステムネック下にゆるやかなアールを付けて手前に戻し、動きをつけている。
一方、フォークにしても無論単一で作ったもので、スプリンガー下のフロントレッグなどはまず先に、旋盤で溝を入れて成形したのちに炙りを入れて曲げ加工。それをあらかじめ用意しておいた約110mmのスーパーナロートリプルに挿しこみ、18インチオーバーの番外で着地させたものだ。
「大変だったのはパテこすりかな。地道なパテこすり。パテを盛って、それを削って平らにしたり丸めたり。ペーパーを使ってずっと手で。朝から晩までなんてのも全然ある。地味じゃねえかな(笑)」
それらを専門にした外注業者に振るという選択肢もあるなかで、すべてを自身の手でやりおおすのが金子さんの立ち位置だ。「まあ自分が作るヤツは自分でやりたいよな」。それがどれほど大変なことかなんて関係ない。氏にとっての一番の問題は、目の前のチョッパーとどれだけ本気でやり合えるか。そこだけである。
HARLEY-DAVIDSON PANHEAD 1953 DETAIL WORK
FRONT FORK
18インチオーバーのスプリンガー。フォーク下部に曲げ加工を施工。三つ又は約110mmのスーパーナロータイプ。
GAS TANK
タンク表面に鉄棒を沿わせていき溶接。モールディングで仕上げ、塗装には暗めのパールパープルをかましている。
ENGINE
エンジン周りはクリーンにショークオリティの光沢を放つ。フットコントロール周りはシンプルな造形で統一。
PRIMARY COVER
カバーにドリルド加工を施し、その後方にはリアタイヤが目立つよう右側からツールボックスを移行して設置。
MUFFLER
絞りパイプをつなぎアップスイープに。エンド部はフィッシュテイルを天地逆に付けて縁に鉄パイプを添えた。
TAIL LIGHT
ロングフォークチョッパーとの相性が高いロンフィンチテールをセット。リアフェンダー端にエッジを立てる。
BUILDER’S VOICE
SPIKE CHOPPERS
住所 | 新潟県新潟市北区島見町字坂ノ下3861-22 |
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電話 | 025-255-2359 |
FAX | 025-255-2359 |
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