YAMAHA SR400 1999
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
艶やかに覆いつくす
人徳のハードヒッター
SRのチョッパーに焦がれて、もうどうにもならない。そうした暴発寸前の想いを抱く中部地方のファンが足を運ぶ終着点は何軒かに限られている。
そして、自分の体温を何度も計り、その症状にふさわしい先として必ず見付け出されるショップのうちのひとつが、この『ザ・ワックカスタムモーターサイクル』だ。主人の加藤さんは、個々の病状が重いほどに腕が冴え渡るタイプの剣豪だ。
カスタムの起点は、以前氏が乗っていたフルモールディングのSRのようなチョッパーに乗りたいというオーダーからだったと言う。いざ製作する段になってオーナーに詳細を尋ねると、個人的にも好きな面白そうなモールディングの案が出たことで一挙にスキームは動き出した。
まず筆頭に、全体のシルエットの構築から着手。国産バイクの場合、シート位置を下げるとどうしてもその前後が窮屈な印象になってしまう。そこでスイングアームに焦点を当て、その部分をただ単純に延ばすだけではない調整を施すことで、絶妙なラインをものにしている。
「スイングアームは長いんですけどバンと延びた感じのないように気を付けました。リアホイールが後ろにいくとその分そこの隙間が弱点になってしまう。客観的に見て間延びした感じになってしまうのでその辺を調整しています」
シート下から地面の方向に向かうフレームをわずかに後方へとずらし、大枠を確定。この辺の知られざる画策が他のチョッパーとはひと味もふた味も違うボディバランスを生み、そこにモールディングされた外装が合わさることで妙なる完成度を生んでいる。
「モールディングで気を付けてることですか? やっぱり極力パテは控えるように、なるべく薄くというのは意識してます。ほとんどが金属モールディングというか。でも塗装を剥がしてしまえばガスタンクのフチとかもちろんパテはありますけど(笑)」
油断なくモールディングされた滑らかな造形に、落ち着いたホワイトカラーが組み合わさって、なんとも品のある装いである。そこにきて、シート下に移行したオイルタンクや、いささか後端を跳ね上げたリアフェンダーといった苦み走った有効打が利き、車体がまとうジェントルに拍車をかけている。
そのきりっと引き締まった佇まいには、見るものの姿勢をまっすぐ正してくれるような風が吹く。そしてそれは、フリークがこぞって心を預ける、作り手である加藤さんの人徳に通じるものがある。
YAMAHA SR400 1999 DETAIL WORK
HANDLE
1インチの汎用ライザーと、ワンオフしたミリハンドルの組合せ。中央部は無垢材でスリットデザインが入る。
FRONT FORK
フォークは純正の6インチオーバー。骨格のシングルダウンチューブから全体に渡ってモールディングされた。
GAS TANK
表面に鉄棒をはわせて立体的に成形。縁取りは滑らかにモールディングされ、ぼかしのペイントで上品に化粧。
FOOT CONTROL
ジョッキーシフト仕様のフットコントロールは一品製作した箇所。支点部にブラス材を使い華やかに装飾する。
OIL TANK
車体一面をモールディングするにあたってオイルタンクはシート下に設置。その周囲のフレームを精妙に調整。
REAR FENDER
フェンダーの後端を若干跳ね上げ、フチ周り全域とシートマウント部に鉄棒を沿わせてモールディングで完遂。
BUILDER’S VOICE
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
住所 | 岐阜県関市東田原489-4 |
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電話 | 0575-48-0428 |
FAX | 0575-48-0428 |
SHOP | THE WACK CUSTOM MOTORCYCLEのショップ紹介 |
営業時間 | 10:00 ~ 20:00 |
定休日 | 月曜日、第2・4日曜日 |