H-D FXSTC 1991
Spiritual Custom Cycles
客として歩んできた
30年の気高いマグマ
名代のカスタムショップ『ロナーセイジ』の流れを汲んだ技が光っている。しかし店主の薬師寺さんは実際にそこで門下生として修業を積んだわけではなく、あくまで客として30年近く出入りし、行くたびに手伝える作業があれば名匠中村さんの傍に立ち、その腕を横目で透かし見てきた。
自身にとって中村さんが確固たる主軸の存在であるために、手がけるカスタムは王道の『ロナーセイジスタイル』である。多くの人の琴線に触れる『美』を内包した佇まいは、このカスタムにもわき目も振らずそのまま投影されている。
「まあロナーセイジで勉強してきたことを、今回は予算の兼ね合いもありましたのでなるべくお金をかけないでシンプルに作り込んだ形にしてます。ポイントはカラーリングとシート周りですかね」
外注ではなく自らが塗ったペイントはタンク上面と両サイドで異なったグラフィックを入れ、一方、シートは後端をわずかに跳ね上げることでホールド感を高め、その下のマウント部を滑らかにモールディング。ガスタンクからリア側へと流れるラインが艶やかだ。
フロントフォークに関してはそのままソフテイル用を使ったのではイメージ通りの図案にならないことから、ヘリテイジ用のインナーチューブを採用。約5cmほど低めることで精悍なフロント周りを描出した。
また、リアフェンダーはシートマウント部と同様に、フェンダーストラットと吸い付き合うようにたおやかにモールディング。テールランプのナンバー灯は敢えて旋盤で製作した部位で、曰く、フライスのように加工して作ったアルミ削り出しとのこと。
では、フットコントロール周りはどうだろう。ショベルのローライダーを模したというそこは、ストックパーツを有効利用してワンオフ。シフトレバーなどは既存品を使うが、プライマリーのリンケージは簡略に外側をかえさず、オイルシールを付けた上で内部で溶接して貫通。ディテイルを崩さず丁寧に処理されている。そしてこの辺の折り目正しいカスタムマナーは、もちろんあの現場から呑み込んできたものだ。
「中村さんは多分人生で一番影響を受けた人だと思います。一生かかっても登れない山だと思います。カスタムはお客さんに喜んでもらうのがもちろん一番ですけど、中村さんに一つでも良い点を付けてもらいたいがために作ってる感じもあります」
決して生半可に謳っているわけではない。北の地で伝承する士にとっては、それほどの存在である。
HARLEY-DAVIDSON FXSTC 1991 DETAIL WORK
HANDLE
ショートライザーにドラッグバーのセットアップ。王道の低く構えたロースタイルとの相性は良好である。
FRONT FORK
ストックフォークではイメージからそれる為、ヘリテイジ用インナーチューブを使い約5cmほどローダウン。
GAS TANK
タンクは後端のマウント部だけツライチになるようタブを溶接して成形。ペイントは外注ではなく自らが行う。
SEAT
シートはホールド感を高めるため後端をわずかに跳ね上げる。シート下は流れるようなラインにモールディング。
MUFFLER
スタイリッシュなダウンタイプのショットガンマフラーはダイナ用を流用。後部にステンパイプを溶接して製作。
REAR FENDER
フェンダーとステーは滑らかにモールディングされる。ナンバー灯は旋盤で造作したアルミ削り出しのパート。
BUILDER’S VOICE
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