H-D FL 1947
LUCK MOTORCYCLES

同色に染めあげる
第一級の破壊的ギグ

「これは純正フレームをベースにした、あんまり派手ではない日常の足として乗れる感じがスタートです。ウチ結構こういうフレームとかを触らないカスタムとショーバイク的なのとの、大きく分けて二通りみたいな感じになるんです」

本陣の京都から日本中へ、そして世界へと武名を轟かせる人物だ。今や米国エンターテインのビッグネームが手放しで惚れ込む存在として知られるが、その実力はとうの昔から際立っていた。店主の杉原さんの仕込むチョッパーには総じて、優等生的カスタムにはない艶っ気がある。

このフレームに手を加えていないナックルヘッドは、どちらかといえば普段のメインメニューだと言う。その中に『ラック』のテイストを入れていくのが一連の流れで、長年煮込んだタンクのマウント位置や、最近登場する機会の多いと話すバヨネットのシッシーバー。極タイトに造作したハンドルなどで我流の味付けがされている。

「ナックルはパンヘッドとかに比べてちょっと小振りなんでその辺の特性も活かしつつさらっと乗れる感じで作ってます。で荷物もくくれてロングも行けてっていう実用性もチョッパー作る上では重要なんでその辺も考えてます」

逆にショーバイクであっても後付けでキャリアを設置して一緒にロングを走るなど、どのチョッパーに対しても視線は一緒だ。ショーバイクだから長距離に行けないといったフレーズは氏の嫌うところで、お客さんのニーズや乗り方に合わせた物作りを履行。ラックの乗り手たちが皆絵になるライディングをキメるのはそんな流儀から来ている。

そうした視点で見ると更に風味が増すチョッパーだ。前後21／15インチホイールに74スプリンガーをセット。リア18インチが主流の同店だが、オーナーの希望で履かせたそれはむっちりとした肉感的な見栄えを演出する。そして銃剣像のバヨネットシッシーバーはワンオフで製作。荷物をくくりつけた姿が遠くかすんで見えるかの堂に入った佇まいだ。

「まあショーバイクではないこういう現実的なチョッパーでもどことなく僕が作ったと分かるテイストにはなってるみたいですね。そんなに意識して作ってるわけではないんですけど（笑）。どうしても寄るというかそういうのはあります」

例えば、それを他人がやったのでは真似をしようにも真似られない壁がある。見かけを取りつくろうことは出来ても決して本質的な凄みに迫ることは出来ない。つまりそこに、第一級の仕事がある。

HANDLE

ラックのテイストが現れたハンドル。ごくタイトに製作されたデザインはライディングスタイルも向上させる。

FRONT FORK

ストックレングスの74スプリンガーにトラクターライトを設置。前に出っ張らせないマウント法も独自のもの。

GAS TANK

フレーム無加工のためマウントステー類をかわすようにトンネルを製作。看板的フライングウィールを描出。

MUFFLER

純正エキパイを使用して後ろ側だけをリメイク。フレームに手を加えないカスタムサンプルとしての一面も持つ。

REAR FENDER

汎用フェンダーに15インチホイールでむっちり感を演出。ダイヤステッチのシートはアトリエチェリー製。

SISSY BAR

銃剣像のバヨネットシッシーバーはワンオフで造作。同店が重点を置くデザインと実用性を兼ねたロング仕様。