BMW Motorrad R100RS 1992
ZENMIND enterprise
牧歌的隠れ家で生み出された
乗り手の鏡たる洗練の駿馬
東京と横浜を結ぶ交通の要である第三京浜の終点・保土ヶ谷ICの程近くにありながら、都会の喧騒から離れた『ゼンマインド』の周囲は自然に溢れ、居心地の良い緩やかな時間が流れている。
主人の羽島さんが標榜する「バイク好きのための隠れ家」というコンセプトが体現されたショップには、週末ともなれば常連客が集まり談笑の花を咲かせるのだろうと想像に難くない。
そんな牧歌的なムードを漂わせるゼンマインドだが、手掛けるカスタムの裾野は広く、ここに見るBMW R100RSのようにアスファルトに溶け込む都会的なフィニッシュもお手の物だ。
R100RSは市販車で初めてフルフェアリングを装着し、空力の重要性を世界に知らしめたBMWきっての歴史的名車。けれどここでは大胆にもそのアイデンティティたる風防を取り払い、カフェレーサーやスクランブラーを思わせる洒脱なスタイルへと変貌させている。
「カスタムの骨子はオーナーの要望を反映したものがほとんどです」とは羽島さんの弁だ。聞けば店舗などの内装デザインを生業とするオーナーが、R100RSの画像を加工して描き上げた詳細な完成図を下地にしてプロジェクトは始められたのだと言う。
フェアリングを排したフロントセクションとの視覚的重量バランスを整えるべく、リア周りはフレームにも手を加えてミニマムな構成とすることで際立った軽快感を演出。それにより1986~’92年の僅かな間しか採用されなかった希少な片持ちスイングアームが一層その存在感を強めている。
本来であれば大型バッテリーが陣取るエンジン後方のスペースには、ワンメイクのケースをあしらい小型リチウムイオンバッテリーを搭載することでリアセクションへと繋がる抜け感を巧みに生み出している点も見逃せない。
羽島さんは「日常の足としても使いたい」というオーナーの要望を的確に汲み取り、現実的ではないリクエストに対しては代替案を出すなどし、密にコンタクトを取りながらカスタムを進めていった。
「カスタムバイクはお客さんが主役であって、僕はあくまでもそれを手伝うというスタンスです」との言葉通り、自身の持てる知識や経験を生かし、クライアントの望みをどれだけ実現できるかを仕事の根幹に置いている。
「バイクはオーナーの分身なんです。だからこちらからスタイルを押し付けるのではなく、オーナーの人となりからにじみ出るものをそこに映し出していけたらいいなと思っています」
(写真・文/馬場啓介)
BMW Motorrad R100RS 1992 DETAIL WORK
GAS TANK
ニーグリップ部に取り入れたシボのある建築素材は内装デザイナーであるオーナーならではの発想だと言える。
BATTERY
ケースをワンメイクし、小型リチウムイオンバッテリーを搭載。この空間がマシンの軽やかさに拍車を掛ける。
SEAT
強度とルックスを擦り合わせてデザインを決定したシートレールに合わせた本革シートは当然ワンオフだ。
REAR FENDER
ミニマムな造形で製作されたフェンダーが軽快感を演出する。片持ちスイングアームゆえステーは右側のみで支持。
REAR SECTION
片持ちスイングアームという個性を最大限に生かしたリア周り。ブラックアウトされたホイールはBMW純正。
BLINKER
端正な車体を邪魔しないようケラーマンの極小ウィンカーを採用。消灯時にはその存在に気が付かない程だ。
BUILDER’S VOICE
ZENMIND enterprise
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SHOP | ZENMIND enterpriseのショップ紹介 |
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