YAMAHA SR400 1994
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
幻影と向き合う
ひとつの駆け引き
この新作のSR400を前に話す加藤さんは、いつものごとく言葉少な目ながら、そこから覗く人間味が胸に染みる。自分をひけらかすことなく、時には言葉に詰まりながらもなんとかこちら側の意向に応えようと返答するその姿に、聞き手側は自然と背筋が伸びてしまう。そんな実直でいて腰を据えた人柄はもはや隠しようもない。
こちらの一台は当初から明確なビジョンがあって始まったものだそうだ。それはクロームメッキ仕上げのフレームで、そこに同じくフルクロームの74スプリンガーフォークを装着。他の外装も全体との均衡をとって製作されていった。
「あとはガスタンクもちょっと造形にこだわってます。シーシーバーも1本ではなくツインレールにしたり、ステップ位置も一見高く見えますけど思ったより乗りやすい位置なんです」
ガスタンクに目を移したい。タンク表面に曲げた鉄棒をモールディングしてる所まではいいが、実はその際に、一度円を描くように切れ目を入れてそこを一段下げた上で鉄板を当てて再製。これは立体感を増幅させるための隠された演出である。
一方、ツインレールのシッシーバーにしても、単純に手間が2倍かかるような加工を実施。むろん配置やバランスを考えれば『かける2』で済むものじゃないが、それを労ともせず何食わぬ顔でやってのけるあたりに、同店のカスタムへの温度が見て取れる。
「シーシーバーもシンプルなのが良いということでしたけどツインでちょっとだけ凝った感じです。でも矛盾しちゃうかもしれないですけど、あんまり派手になり過ぎず、変に作り込まずっていうのが僕のイメージです」
メインフレームのオイルタンクはシート下に移設し、ワンオフのジョッキーシフトも同じくクロームでフィニッシュ。「とにかく全部ザ・ワックでやって欲しい」というオーダーを正面から受け止めた氏のパッションが、痛快なほど縦横に弾(はず)んだチョッパーだ。
「スプリンガーとかはあれですけど、ほとんど手作りした感じです。見せ場ですか? 細かくというよりは全体のバランス。ちょっと当たり前ですけどね……ごめんなさい(笑)」
更に掘り下げて尋ねると、一番はオーダーをもらったお客さんが実際に乗ってカッコ良くなるかどうか。いつもそこを想像しながら作っていると言う。
常にオーナーの幻影を思い浮かべてバイクと向き合うタイプの作り手は、費やした時間のままに、おのずとそのつながりも深くなる。
YAMAHA SR400 1994 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークはハーレー用74スプリンガーの4インチオーバー。2連ヘッドライトはナイス! MC製を選択する。
GAS TANK
ピーナツタンクをベースに加工。表面を切り落として一段下げた上で鉄棒をモールディングし、立体感を演出。
FOOT CONTROL
クロームのフットコントロールとジョッキーシフトはワンオフ。見た目には高い足位置ながら操作性は良好。
HARD TAIL
リア周りはハードテイル化されスタイリッシュなアウトラインを形成。オイルタンクはシート下に移設された。
MUFFLER
単一で仕上げたマフラーはチョッパーライクなアップタイプに。エンド部にはTHE WACKの文字が刻まれる。
SISSY BAR
シッシーバーはシンプルなデザインながらもギミックを効かせたツインレール仕様。アクセントに映えた箇所。
BUILDER’S VOICE
THE WACK CUSTOM MOTORCYCLE
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電話 | 0575-48-0428 |
FAX | 0575-48-0428 |
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