H-D FXS 1980
VIDA MOTORCYCLE
かつての名作を教科書として
裏切らずにスマッシュヒット
近年、ハーレーのダイナモデルやFXRをベースとしたスピードクルーザーや、パフォーマンスバガーなどを数多く製作している『ヴィダモーターサイクル』。同店がフルスクラッチのチョッパー、とりわけユーロカスタムを得意としていることを知るのは古くからのファンと、感度の高いカスタムフリークだろう。
代表の大久保さんはかつて、ドイツのハバーマンパフォーマンスが造るユーロカスタムの美しいフォルムに魅了された。また、自身が過去にハーマン製フォークを付けたチョッパーに乗っていたことからハーマンにも惹かれ、その独創的なフォークやドラッグレース用フレームにも強くインスパイアされたと言う。
「自分が好きだったハバーマンやハーマン、それを全く真似するんじゃなく、自分のスタイルで上手く作れないか。そう思ったのがユーロ系のカスタムをやり始めたきっかけでした」
そんなヴィダが久方ぶりに放ったフルスクラッチのユーロカスタム。オーナーの生まれ年だという’80年のショベルモーターを心臓に持つロングフォークチョッパーだ。
オーナーはヴィダが造るチョッパーのファン。オーダーの教科書となったのは、これまでに同店が手がけてきたマシンたちだった。
「過去の車両を参考にカスタムプランは進んでいきましたね。パーツだと、あのバイクと同じファットスポークを使って欲しいとか、スプリンガーのロングフォークはこのバイクと同じくらいがいいとか」
「作り物に関しても、タンクにえぐりを入れたい、スポイラー兼オイルタンクにしたい、という感じでオーナーさんに選んでもらいながら打ち合わせを重ねていきました」
なるほど、美麗な一台に仕上がっているのは過去作を『いいとこ取り』したような、いわば集大成的なマシンだからか、と妙に納得する。
先述したハバーマンを筆頭としたユーロカスタムを、日本人向けに凝縮させたようなドロップシート然としたシートの低さ。腰周りのすぐ後ろにはファットなタイヤが存在感を醸し、乗り手が跨がれば地面を這うようなライディングスタイルを生む。
そして外装の各所に見るクリエイティビティ溢れるメタルワークと、個性の強い各セクションを均整の取れたマシンに仕上げるバランス感覚……。それはどこか、久々にリリースしたシングルで見事、期待を裏切らないスマッシュヒットを決めるロックスターの姿を連想させた。
ヴィダ流ユーロスタイル、ここに極まる。
(写真・文/マツモトカズオ)
H-D FXS 1980 DETAIL WORK
HANDLE
美しい作り込みのステンレス製ハンドルバー。この辺りもヴィダの真骨頂。メーターはタンク上にマウントする。
GAS TANK
えぐりの効いた精悍なデザインのタンクはヴィダの代名詞。ガンズカスタムペイントのソウルペイントが映える。
OIL TANK
スポイラー然としたオイルタンクは過去作にも用いられたヴィダの十八番。機能面では冷却効果も期待できる。
MUFFLER
プライマリーはセル付きBDL製2インチオープン。左出しされた2インチのワンオフマフラーが存在感を放つ。
SEAT
シートは宮城県の名店、ジミードープの仕事。シート下にはエッジの効いたデザインの電装ボックスが収まる。
TRANSMISSION
ベイカー製の6速ミッションとライトサイドドライブをチョイス。スプロケットブレーキはカスタムテック製。
BUILDER’S VOICE
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