HARLEY-DAVIDSON FLH 1969
VIDA MOTORCYCLE

想像と技巧からの
美麗なハイエンドピース

クリエイティブなデザインと、それを具現化する才気あふれるメタルワーク。そしてマシンを一目すれば、フリークならずとも製作者が分かってしまう無二の個性。ヴィダの作るフルスクラッチはいつだって衝撃的だ。

「短いフォークの、カッコよくてメカメカしさのあるバイクを作りたかった。これぞフルスクラッチ！って言える、全てを手作りした思い入れのある一台ですね。特にこだわった部分ですか？『全部！』ですね（笑）」。そう語るのは、ヴィダのオーナー大久保氏だ。

まずは、フロントエンド。フォークにはマッシブな印象を感じさせるGCBセリアーニの倒立をおごる。そして強烈に個性をアピールする大口径23インチのフロントホイール。これは氏がデザインして加工屋にオーダーしたという一点モノだ。また、ブレーキはブレンボのレーシングキャリパーに13インチローターという組み合わせで強力なストッピングパワーを確保する。

エンジン周りのメカメカしさにも目を奪われる。エンジンはクランクケースとロッカーカバーのみストック。S&Sのストローカー、フライホイール、ピストン、シリンダーヘッド、 更にカム&オイルポンプも換装され、1,500ccのパワフルなエンジンにアップグレードされた。

一方、ミッションはベイカー製パワーボックスのライトサイド。この無骨でメカニカルなヴィジュアルに負けぬようにと、エンジンもスプリットヘッドにワンオフのオイルライン、そしてプッシュロッドカバーなどでドレスアップ。同じくワンオフのコントロール類と相まって、ライトサイドは目論見通りのメカメカしさだ。そしてそれを見せるために、エキゾーストパイプはレフトサイドへ移行する。

しかし驚くべきギミックはシートにある。リジッド特有の乗り手へのダメージを軽減すべく、シート下にはエアシリンダーが仕込まれている。そのためオイルタンクはフロントへ移設。デザインもさることながら、高い冷却効果をも入手する。

リアホイールは迫力の20インチで、アクスル部分はハメ合わせにしてアルミブロックで固定。曰く、このセクションが最も苦心した部分とのことだ。そして左サイドを見れば、ワンオフのハブをアクスルぎりぎりまで持っていき、その流麗な造形で見る者を圧倒している。

あまりの見どころの多さに、思いがけず溜め息が出る。これぞ、ヴィダの手がける妥協なきフルスクラッチ。同店が世界から注視される理由をここに見る。

（写真・文／マツモトカズオ）

FRONT WHEEL

一点モノの無骨かつシャープな23インチホイール。ブレーキはダブルディスク。ブレンボで武装される。

GAS TANK

流麗なタンクのシェイプはヴィダの代名詞。艶やかなペイントは大久保氏が信頼するペインター、420Kustoms。

ENGINE

スプリットヘッドとワンオフのファンネルにはラッキーダイヤモンドが手がけたエングレービングが施工。

CARBURETOR

Eキャブにサンダージェット、ファンネルはワンオフ。シート下のスイッチでシリンダーや灯火類を操作する。

LEFT SIDE

エキゾーストパイプは左出しに設定。リンクを介したシフターが見せ場となる。コイルや配線は徹底して隠された。

REAR FENDER

フェンダーのエッジにステンレスパイプを溶接。強度アップと塗面保護を兼ねる。塗装とのコントラストが秀逸。