YAMAHA SR400 1993
ECCENTRIC MOTORCYCLE
つき動かされるままに
果てない欲求の天王山
精巧な加工技術で常に人目をさらってきた国産カスタム界の切れ者、『エキセントリックモーターサイクル』の新作はいつになくきつい。シルエットこそノーマルライクだが、店主大西さんの仕事にピントを合わせるほどに正気の沙汰じゃないことを実感する。そして2019年度のホットロッドカスタムショーでBest Motorcycle Domesticを受賞したSR400はいわば、作り手の集大成的一台でもあった。
「俺の頭の中にふつふつと貯まりに貯まったカスタム欲を全部詰め込んだって感じです。それをぎゅっとまとめた車両ですね」
まずはエンジンから集中していこう。SRオーナーでないと分かりにくいが、よく見れば通常前傾のエンジンは、直立にリマウントされている。これは古い英車の雰囲気を狙ってのものだが、作るにあたってはエンジンマウントを全て作り直して角度を修整している。
キャブレターも本来はこの外側向きに出せるはずはない。そこでフレームの中に隠れてしまうのがデメリットだったその箇所を、周囲のフレームごとモディファイ。中央にごつめのパイプを入れ直して、『どうしても目立たせたかった』欲求をすんなりかなえている。
さて、お次は鈑金だ。すさまじい手数とクリエイティブなアイデアが混然一体となったエクステリアは、氏が見初めたアーティスティックな世界観を披露。鉄板と丸棒のみを使って描き出す景色は鮮烈きわまりない。
なかなか悩んだと言うタンクは2重構造とされ、1層と2層の間にインジケーターランプが仕込まれている。このセクションはまず、1層のタンクを作り、その上に2層を被せた設計だが、ガスキャップは1層2層共に筒抜けになってないといけない。なので、先に筒だけを溶接してその上から被せる格好で成形されている。そして配線に関しても、内部に逃がし用パイプが張り巡らされ、すべて見えない所からリリースするという徹底ぶりだ。
一方、リア周りもまた格別。大西さんの好きなフィフティーズのアメ車やテールフィンがイメージソースとなったそこは、勿論すべてハンドメイドの労作である。細やかな造形に氏の芸術肌な感性が多分に現れるが、アメ車のモールを再現してぐるりと一周巻いたステンレスの丸棒もアクセントに素敵だ。
「あんまり今までの概念にとらわれないで、なんかちょっと面白いことを詰め込んでみたかった」。その躍動感、まるで冷たくなっていた手足に血の通うような感覚を覚える。
YAMAHA SR400 1993 DETAIL WORK
HANDLE
ダブルどころかトリプルデザインとされたロボハン。大味になりがちな造形をスタイリッシュにまとめている。
FRONT FORK
ストックのフォークは4インチ延長。特徴的な表情を醸すヘッドライトはワンオフで、フォークブーツを装着。
FRONT FENDER
当初からフェンダーの設置は絶対条件だった。下側の凝った造形など、とにかく隙の無い作り込みで構成される。
GAS TANK
通常目立たせたくない箇所を逆に目立たせたい。2重構造のタンクにインジケーターやスイッチ類が仕込まれる。
ELECTRICAL BOX
電装ボックスや周囲のカバープレートもすべてワンオフ。リアへとつながる滑らかなデザインも同店の本領。
REAR END
‘50年代のアメ車をイメージしたリアエンド。モールを意識してステンレスの丸棒を沿わせ頭のみポリッシュ。
BUILDER’S VOICE
ECCENTRIC MOTORCYCLE
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