H-D EVOLUTION 1984
STOOP MOTORCYCLES
けちなフィールドに寄せない
20代女性のトゥルーロマンス
オーナーは20代の可憐な女性である。アッシュ系のショートヘアにスタジャンを羽織ったラフな格好で現れた彼女は、小柄な体躯とはギャップのある、肩で風を切るようなモーションでドアを開いた。
口からはタバコの煙がうまそうに吐き出され、店の中からだと逆光となったそのシルエットに目を奪われる。今日納車だと聞かされたチョッパーと彼女を前に、なんだかいろいろと追い付かない。
納車の日に埼玉の『ストゥープ』にお邪魔した。’84年式の最終エボリューションがベースのチョッパーは、前期型ショベルヘッドの丸型スイングアームを入れている以外はフレームはストック。そして4速エボリューションのキモであるキックスタートは、ミッションのメインシャフトを交換してオープンプライマリー化された。
「シャフトを交換しないと確かオープンが付かなかったんじゃないかな。もうだいぶ前からあるバイクだから。なんか店始めた頃からずっと離れないであるんだよ(笑)」
そもそも、ストゥープ店主のモーリーこと生森さんと妙に縁のあるこのバイクは、お客が付く前から在庫車としてカスタムがスタートしていた。しかし、ちょうどそんな時にオーナーの女性がたまたまやって来たのである。なので、普通なら当然自分好みのカタチに軌道修正するところだが、彼女の場合はそうではなかった。
「ちょうど作ってたんだけど、そのまんまいっちゃってくださいって。色も全部好きなようにって言われてて、女の子寄せにしないで良いってことだったから男っぽくなってる。あの子のことは考えてないから(笑)」
いやいや、考えてないわけがない。確かに、いきなりこのチョッパーだけをデーン!っとやられたのではとてもじゃないけど彼女の姿を想像することは難しい。でもだ。ひとたび跨った時の一体感を見れば、思わず言葉にならない吐息が漏れてしまう。さすがですよ。
外装のタフガイぶりも結局はつじつまが合う。6インチオーバーのフロントフォークに、ナローなガスタンク。シュッと後方に伸びたデンプシーロール的マフラーは、極限まで車体に寄せてマウント。これはリアショックレスとしたセットアップのなせる業である。そして最後は、ダークブラウンの色気の『い』の字もないソリッドカラーでフィニッシュ。
「ウチが好んで作るのはこういう色が多い。もうドシンプルな感じ。それがたまたまはまったんだね。なんかこざっぱりしてカッコいい子だから」
HARLEY-DAVIDSON EVOLUTION 1984 DETAIL WORK
HANDLE
ライザー一体のショートハンドルは女性オーナーが跨るとカチッとはまり、得もいえないポジションを生む。
FRONT FORK
6インチオーバーのフォーク。ほど良く伸ばしたフロントエンドでストックフレームとの均整が取られる。
GAS TANK
後方を内側にやわらかく絞り込んだガスタンク。ナローなボディには単色のペイントとピンストライプを付加。
MUFFLER
2本出しのショットガンマフラー。フロントパイプは左側から回り込んで合流し、エンドをわずかに外側へ成形。
REAR FENDER
細身のリブフェンダーはシンプルな角棒で支持。優雅に踊る同系色のピンラインが華やかな印象を醸している。
REAR END
アルミ製キャリパーサポートはオリジナルを使用。ショベル前期の丸型スイングアームはフレームにジョイント。
BUILDER’S VOICE
STOOP MOTORCYCLES
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