TRIUMPH T100 1947
ENJOY MOTORS
ローカルのサポートが結実した
リバースドヘッド・ドラッガー
九州は熊本にショップを構え、トライアンフを筆頭としたヴィンテージ・ブリティッシュを中心に取り扱うエンジョイモータース。今回紹介するのは、昨年の横浜ホットロッドカスタムショーに出展されたトライアンフT100。店主田中さんの所有するマシンである。
「4年前、独立した時に買ってたんですが、エンジンもミッションもダメだったので放置してたんです。(普段の足として)BSAも持っているので、全く手付かずの状態でした」
4年の間、店の片隅で眠っていたマシン。しかしカスタムの機会は突然訪れた。地元の先輩にあたるキングスパフォーマンス代表の義間氏に「ロッドショーに出さないか」、と誘われたのである。降って湧いた好機。それは田中さんが長年温めていたプロジェクトが始動した瞬間でもあった。
このマシンを語るにおいて欠かせないファクターの一つ。それは前後を反転させたヘッドだ。
「昔の雑誌に載ってた白黒写真で見たことがあったんです。アメリカのドラッグレーサーで、エンジンを反転させたバイク。この発想でちゃんと走れるバイクを作ってみたかったんです」
排気と吸気とが完全に逆転し、キャブがシリンダーの前に、エキパイが後ろに配される事で生まれる強烈な違和感。そのキャブもアマルのモノブロックを連装するツインキャブ化、またエキパイは管長を稼ぐべく一直線に最後尾まで伸びるなど『本気感』が漂う。
フレームはストックのハードテイル。各部のラグを埋めるなどスムージングが施されていたものをリペイントしている。フォークも’40年代のストックを使用しており、それは純正をベースにレーサーを造っていたであろう’60~‘70年代当時のプライベートレーサーを想像させる。またバックステップも、田中さんが苦心の末に完成させた部位だ。
全てのペイント&ピンストは地元Orvis Oneカジさんの手によるもの。ヴィンテージレーサーの雰囲気を壊さぬ巧みなペイント、そしてエイジングに声を失う。
晴れて横浜ではゲストビルダー、The Tiger Shackのライアンのアワードに選出。熊本の先輩義間氏の一声で始まったプロジェクトは、カジさんなどローカルのサポートを得て栄冠を手にした。
そんな地元の固いつながりで結実したこの一台で、田中さんはいつの日か、レースに挑戦したいと言う。舞台は砂の上か、サーキットか、はたまた塩平原か……。仲間とつむいだその夢は、まだまだ走り出したばかりだ。
(写真・文/マツモトカズオ)
TRIUMPH T100 1947 DETAIL WORK
HANDLE
ドラッグ仕様のワンオフハンドル。グリップには野球のバット用テープを巻く。スロットルホルダーはアマル製。
GAS TANK
ヴィンテージのハマータンクは先輩義間氏から譲り受け、ピンストはOrvis One。ローカルパワーを感じるパート。
ENGINE
反転ヘッドが強烈に主張。ミッションはキックが外されたレース仕様。各所のさりげないピンストライプが粋。
SEAT
後ろ乗りできる長さを確保したシートはPennyのスケートボードから型を取る。表面加工とピンストはOrvis One。
BACK STEP
ハンドルバーの端材を用いたというバックステップ。点付の溶接痕や荒々しいドリルドがレースのリアルを醸す。
MUFFLER
戦闘機のような排気管。ハンドルに切れ角がないため、取り回しを容易にするためのグラブバーを設けている。
BUILDER’S VOICE
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