HARLEY-DAVIDSON KNUCKLEHEAD
STOOP MOTORCYCLES
夢と愛の教科書
ロッキー・バルボア
あのロッキーと、きわどくリンクする。生卵をジョッキに注いで一気飲みするや、いきなり走り出すフィラデルフィアの街並み。ズタボロの上下スウェットに身を包んだその姿はあまりにも格好良く、精肉を殴ればコブシが割れるんだと教えてくれたのがあの場面だった。そして、テーマソングがまったくもって色あせない。あるスーパーでは、レジが混みだした途端に例の音楽が響き渡るという笑い話すらある。
さて、本題は埼玉のストゥープだ。ドイツのモーターテクニック社製ナックルエンジンを搭載したチョッパー。元々は、過去に製作したUモデルに今回の新品エンジンを載せ替え、それにあわせてフレームをやり直したものだそうだ。
「ショー用にちょっと頑張って派手にした。ふだんフレームまで柄入れることはないから。雰囲気的にはキャルトレンド(※ローライダー系カスタムペイントショップ)のマーキュリーをパクったの。ずっとロッドショーでショーを取ってるマーキュリーが好きで」
代表のモーリーこと生森さんに言わせれば、一見シックなこの装いで派手。そして、他店のそれをパクったと、気持ちいいほど明け透けな答えが返ってくる。一般的に濁したい部分であっても、氏にはその手のみみっちさは皆無。でんと構えた大人の余裕がきっとそうさせる。
「まあ時間が経っても嫌にならない感じ。普通に乗れるナックルっていうか、軽く乗れるやつ。でも本当なら、ショーで映えるのはもっとハンドルが低くくてまとまった形なんだけど、乗っかってカッコいいのはこっち」
すべて計算ずく。一から十を理解した上で、じゃあそこから何を尖らすか。全面に渡って考え抜かれたフォルムなだけに隙が無いし、隙を見せない。それはリアフェンダーのステーひとつ見ても、如実に現れている。
丸棒ではなく六角棒。しかも六角のエッジを全部落として、ほんのりとやわらかさをアレンジ。これがピーナツタンクなら丸棒でも良かったが、今回はスポーツタンク。それに合わせたというこの繊細なニュアンスが、果たして伝わるだろうか。
やはり、ロッキー。当時の男たちは、映画を観た後はもろにロッキーの気分になったもの。無駄にその辺の階段を駆け上がったりした記憶は今でも鮮やかに残っている。もちろん、何もモーリーさんがロッキーなわけではない。焦点は、その高揚させる不思議な力だ。あのとき誰もが居ても立っても居られなかったように、それと同じ感覚が、いつだって話を聞き終えたあとに押し寄せる。
HARLEY-DAVIDSON KNUCKLEHEAD DETAIL WORK
HANDLE
ハンドルは前屈みのアグレッシブなポジションを形成するミディアムエイプ。ブレーキレスのシンプルな造形。
FRONT FORK
35φのナローフォークは2インチオーバーのバネを硬めに設定。ホイールはショー用に23インチの大径を装着。
GAS TANK
結果的に容量が確保出来ないで失敗したと言うエグリ入りのスポーツタンク。ペイントはフレームにまで及ぶ。
ENGINE
独国のモーターテクニック社製新品ナックルを積む。フレーム内のスッキリした空間処理に感性の高さが現れる。
MUFFLER
同店のアイコン的シェイプの、エンドをわずかにカチ上げたミッドハイマフラー。スピード感を醸すセクション。
REAR END
フラットフェンダーを支持するステーは六角棒の角を落として均す。フレームには同系のペイントが彩られた。
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