YAMAHA SR500 1980
G CLASSIC CUSTOM PAINT
美的音感を養う
嘘のないベアメタル
まず前提に、ペイントショップが手掛けた一台だ。で、この旨味エキスをたっぷり含んだスタイリング。カスタム屋顔負けの出来栄えである。いや、というより、カスタム屋の側面を併せ持ったペイントショップと呼ぶ方が正確だろう。
キッカケは、ペイントをこなしてゆく過程で自然とカスタムのオーダーが増えていったことだそうだ。ちなみに、普段から多くのプロショップが手掛けたペイント前の、つまり加工跡が剥き出しの『素』の状態を扱う仕事上、目の肥え方は半端ではない。いわば、良い音に触れて育った子供に美的音感が身に付きやすいのと同じ論法である。なので、ペインターがカスタムを手掛けた場合、ストライクゾーンから外れることはまずない。
「最初これ作ったのは、そもそもウチがボバーのイメージが強かったんですね。それで、そこだけじゃないよっていうので(笑)。それを見せようかなというんで、ロングフォークを作ったんです」
ヴィンテージらしいフォルムに、その年代の空気感を塗装でプラス。しかしそこで終わらせるのではなく、ちょっとお茶目な感じを入れたと店主の赤坂さんは言う。
「エンジンのフィンとかですかね(笑)。これ結構目立つんですよ。もうひたすらベルトサンダーで地道に削っていった」
他にも、目いっぱい下げた車高と、フレーム表面をなめらかに仕上げたスムージングも見逃せない。まず車高は、リアショック上側のマウント位置をいじりたくなかった為、260mm長のショックと、リアフェンダーをタイヤと干渉しないギリギリのクリアランスで調整。そしてスムージングは、ネック周りとダウンチューブの溶接跡を重点的に処理。結果的にノーマルながら、もはやラグ風カスタムフレームの様相を呈するほどの変わりようである。
中古で入手した6インチオーバーのガーターフォークとシッシーバーのデザインも見事な相性だ。また、ホイールに張り巡らしたツイストスポークとクリーンなシート下など、とにかく外し玉の無いセットアップで固められている。
そして極めつけは、マフラーに施したフレイムスだ。実はこれ、塗装ではなくブラストで描いたデザインで、メッキから上がって来た物をマスキングしてブラストを当てたものだ。「結構な勇気ですよ、失敗したらアウトみたいな(笑)」、となかなかリスキーな手段ながら、得られるそれは通説通りにハイリターン。フィナーレを飾るにふさわしい一手である。
YAMAHA SR500 1980 DETAIL WORK
FRONT FORK
フォークは中古で手に入れた6インチオーバーのガーターフォーク。丁寧に下地を作り車体と同系でフルペイント。
FRONT WHEEL
フロントはDIT製21インチをセット。やり過ぎず静かに主張するツイストスポークがアクセントになる。
GAS TANK
タンクはスチールでワンオフし、当時のシーンを想像してゴールドペイントにグリーンのフェードを入れる。
FOOT CONTROL
足回りをワンオフし車体と同じゴールドで塗装。マフラーに入るブラストを当てて描いたフレイムスが決め手。
FENDER STAY
フェンダー形状に合わせたステーの下に更に、シッシーバー一体のステーがゆるやかなアールを描いて固定される。
SISSY BAR
デザインは作ってる時のノリで決めていくと言う。荷掛フックを設けた下側のステーなど精緻な作りが見もの。
BUILDER’S VOICE
G CLASSIC CUSTOM PAINT
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