HONDA XLR250R 1986
ASK.MOTORCYCLE
信じたスキルとホンダの流儀
カスタム版デュアルパーパス
「いまカスタムじゃなくて普通の二輪業界では『デュアルパーパス』が流行ってて、この定義ってオンロードとオフロードを組み合わせたスタイルなんですね。そこでふと、カスタムデュアルパーパスがあったら面白いなって。それが始まりです」
型にはまることない自由な発想と、それを具現化する高度なスキルを武器に、躍動し続けるショップのブランニューである。ベースは’86年式XLR250Rで、エンジンはXR250のコンペティションモデル、ME06。のっけからオフロードファンでなければなかなか付いて来れない、マニアックな単語が飛び交う一台だ。
代表の山本さんは、オンロードとオフロードの組み合わせが既定路線であることを踏まえ、カフェレーサーとオフロードのカスタム版デュアルパーパスをコンセプトに製作を開始。
「タンクにTHE halfと入れてるのはそのためです。半分ずつってことなんで。それと今回はディメンションを下げたくなかったんで、フレームとスイングアームには手を入れてないです。下げるよりむしろ上げる方向にしたかったんで」
波状の無い作りと、整備性の良さ。常に同店がウエイトを置く2点が見せ場である。まず、アルミ叩き出しの見事なボディシェイプが冴え渡った外装だが、既存の焼き増しでないオリジナリティ溢れた造形は、瞬く間に見る者の心を奪う吸引力を放つ。特に、車体上部の流麗なラインと、各部品のスムースなつながりには計算された『美』が宿る。そして、整備性の高いディテイルワークだ。
例えば、タンク下のカウルマウントはカスタム車では滅多に目にしないグロメット止め(保護用樹脂マウント)となり、フロントバンパーはわずかボルト3本で完全脱着。シートもボルト2本で外せるなど、簡単にパーツを外せる整備性を考慮した作りは、古巣ホンダのオプション部品の構造に倣ったものだと言う。
フロントフォークのローダウンも発想は同じだ。後々のことを考えた場合、ノーマルを旋盤で加工して下げた方が楽だが、それだと腐って交換したい時に対処が難しい。そこで、代用の効くCB400のインナーチューブを探して来てそれをセットしている。
手作業のボディシェイプというアナログな作業工程を経たカスタムながら、要所に最新バイクのトレンドが入ったハイブリッド。デュアルパーパスやメーカーライクな整備性、そしてアクリルの断面が光るウインカーなど、フリースタイラーとホンダイズムのコンボに、よろけるような衝撃を覚える。
HONDA XLR250R 1986 DETAIL WORK
FRONT COWL
アルミ板を使った、得意のボディシェイピングによるフロントカウル。縁取りを気持ち立ち上げて立体感を演出。
BUMPER
アルミワンオフのバンパーボックスはボルト3本でごっそりと脱着可能。デザイン性の高いメカニカルな部位だ。
GAS TANK
製作時には特に上部のラインに配慮すると言うワンオフタンク。カウルはタンク下でグロメット止めとなる。
AIR CLEANER BOX
内部で左右に吸気と排気で分割。またマフラーエンドを左側から放出。無理のないデザイン性の高さに舌を巻く。
SEAT COWL
カフェレーサーをイメージしたリアカウルにセパレートのワンオフシートを装着。すぐ下は電装ボックスとなる。
REAR END
クオリティの高さはこうした部分にも現れる。ワンオフのフェンダー&ステーとダストガードを同色の黒で統一。
BUILDER’S VOICE
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