YAMAHA SR400 1994
AN-BU CUSTOM MOTORS
ひと目で諭す
ヤル気のレーシングスタンド
紛うことなきアンブのショップカラーに染め上げられたストリート・カフェスタイルだ。レーシーなフォルムに宿る危うい香りに、アイコンになる右にオフセットしたフロントマスク。例えみずみずしい若葉が萌えた場所で撮影しても、どこか緊張感の漂う存在感がある。
レーシングスタンドで支持したSR400は、サーキットや峠走行を楽しめるように製作された。SRの良さを活かすならこういうスタイルだろうと、店主の藤田さんは語る。
「まあ得意といえば得意なカスタムかな。膝とか擦れる感じでパーツはいろいろこだわってる。まず擦る部分のステップなんかはコントロールしやすくて、ライディングも調子良い場所を考えたり。これは削り出しのワンオフなんだけど、ポジションが決まったら市販しようとも思ってますね」
オリジナルパーツの、層の厚さも同店の強みだ。フルカウルやシートカウル、タンクなど、そのどれもが高い独自性を持ち、国内ばかりか欧州のファンからも熱烈な視線が注がれている。それは、たびたびヨーロッパのバイク雑誌にフィーチャーされてることからも明らかだ。
「マフラーはウチで出してる汎用品を煮詰めたもの。簡単に言えば、内側に寄せて上げてる。他は、いま開発中のフロントフォークのシングルレートスプリングかな。サーキットみたいな一定の条件の路面だと、バネも一定の動きをした方が乗りやすいところがあるんです」
一般的に、街乗りではシチュエーションが様々なためダブルレートが良しとされるが、サーキットのような一定の場所ではシングルレートが逆に向いていると話す。かつてフォーミュラカーの世界に身を置いた氏の持論だ。
アルミタンクは、以前手掛けたBMWのK100RSのワンオフタンクをベースに加工し、リアにはオリジナル商品のカウルをボルトオンで装着。そして、カスタムファンならどうしても気になってしまう箇所の、純正状態のサブフレームについて訊ねれば、「切っちゃったら今後自由が利かないでしょ」、とニヤリ。カスタム車を前に、現在進行形で対峙し続ける姿勢はもはやビルダーの性だろうか。
レーシングスタンドが物々しさを増す、伝家の宝刀的スタイルにメイクした一台。見るほどに、感じるものがある。絶えず息づく猛烈な感情を、グッと押し殺したかの面構え。そこには、つねに湯のように沸き立ち、つねに爆発する契機を欲しているかの激情的なものが漂う。サーキットで解き放たれた瞬間が、世界のはじまりだ。
YAMAHA SR400 1994 DETAIL WORK
FRONT COWL
オリジナルのフルカウルで武装。右にオフセットしたヘッドライトで形成する姿は同店の専売特許的スタイル。
FRONT BRAKE
熱とカーボンカスの逃がし用にスロッテッド加工を実施。フォークスプリングは開発中のシングルレートに変更。
GAS TANK
タンクは以前製作したBMWのK100RSをベースにアルミで加工。スタイリッシュかつスピード感漂わす造形。
SEAT COWL
やわらかな丸みがポイントのシートカウルはアンブオリジナル商品。サブフレームは切除しないで維持する。
BACK STEP
バックステップも開発段階の物を装着。ステーはスチール製。オリジナルマフラーをベースに極力擦らないようセット。
REAR END
コンセプトを明確にするレーシングスタンド。リアショックはYSS製350mmのロングサイズをマウントする。
BUILDER’S VOICE
AN-BU CUSTOM MOTORS
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