HARLEY-DAVIDSON FX 1981
MOTOSHOP TONOUCHI
クオリティを維持する
ブレない美学
低いマシンだ。オーナーの要望をド真ん中で捉えた、突進力の強さを想起させるプロポーション。チョッパー全盛の現状においてひと際異彩を放っている。
特に、ライディング時においてそれは顕著となり、あたかも普通車に対するレーシングカーほどの着座位置の違いすら受けると言ったら大げさか。そして、その先に広がる景色もまた格別。視点が下がることで、見える世界とスピード感は一変する。
製作は、群馬県桐生市のモトショップ・トノウチが行った。コンパクトかつスタイリッシュなカスタムを真骨頂とする同店は、作り手のスタンスにブレが無いため、一貫してクオリティの高いマシンをリリースし続けている。そしてこの、『ブレが無い』というのがポイントで、通常多くのカスタムを手掛けてきたショップには、いわば『外した』車両が数台あるものだが不思議とそれらが見当たらない。どれも、シュッと綺麗にフィニッシュされたものが並ぶ。テクニック云々も重要だが、この芯となるスタンスはそれ以上に完成度を大きく左右する要素なのだ。
しかし、代表の登之内さんは決して頑固一徹の職人肌ではなく、人当たりの柔らかな人である。口数こそ多くは無いものの、内面に秘めたブレない芯の強さとは対照的なフレンドリーな空気感をまとっている。
「ポイントは低く見えるところ。そのために高さを抑えたタンクをローマウントしたり、ハンドルも上げないようにしている」と、氏はこちらの質問にひと言ひと言、丁寧に答えを返す。そして、一番時間をかけた部位がそのタンクで、オーナーが用意してきた写真をベースに製作したものだと言う。
1981年式FXを使った今回のカスタムは、オーナーの理想形を全面的にバックアップした内容である。事前にイメージするパーツ部分の写真を何枚も送ってもらい、そこから登之内さんがプロとしてバランスを見ながら作業を進めて行った。
フロントに74スプリンガーを装着し、前後に19/16インチホイールをセット。エンジンはフルリビルドされ、骨格となるフレームのリア周りはリメイクしたものだ。「頼まれて出来ないことが無いようにしている」とサラリと話すが、それに応えられるショップは限られている。
フレーム加工という大技からパーツ単品の処理に至るまで、その振り幅は広く、何より精緻だ。テールライトは型からおこしてアルミを流し込んだ鋳造のオリジナルで、ハンドシフトのステーや真鍮を旋盤で削り出したノブからは作り手の気概が透けて見える。
「細かい作業にもう少し時間が割けると良いんだけど」。しかし、限られた時間の中で常に最大のパフォーマンスを発揮するのが同店のプライドである。
HARLEY-DAVIDSON FX 1981 DETAIL WORK
HANDLE
高さを抑え手前にベントさせたワンオフのハンドル。フロント周りのカラーに合わせてブラックアウトされる。
FRONT FORK
フロントはこの手のスタイルと相性良好な74スプリンガー。ヘッドライトはUNITYのヴィンテージを装着。
GAS TANK
ロー&ナローな形状に成形されたワンオフタンク。センターのメタルプレートとH-Dロゴが違和感なく調和。
HAND SHIFT
スロッテッド加工を施したステーには真鍮製のノブが付く。配線など細部に至るまで綺麗な処理が為される。
FOOT SHIFT
真鍮ペグを使ったフットコントロールやフットボードのステーにも作り手のキメ細やかな性格が見て取れる。
SISSY BAR
ワンオフのシッシーバーをブラックアウトし、オリジナルで販売しているアルミキャストのテールをセット。
BUILDER’S VOICE
MOTOSHOP TONOUCHI
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