HARLEY-DAVIDSON FLH 1969
POWERS MOTOR CYCLE

ヴィンテージパーツを使った
裏をかくチョッパー

ユーモアある店主が営む茨城県古河のパワーズモーターサイクル。ショップには代表の川崎さんの人柄を慕って、平日・休日関係なく、お客さんや友人が入れ代わり立ち代わりやって来る。

ドラッグストアを改装して使っている店内は広々とした空間で、足を運んできた人たちはそこで何をするでもなく、談笑したり本を読んだりして思い思いの時間を過ごしている。要は、川崎さんのテリトリーには不思議な居心地の良さがあるため、皆何の気なしに訪れるわけだ。

そんな中、彼はお客さんと会話を楽しみながらも手を休めることなく作業を進めてゆく。今回の1969年式FLHもそうした日常の風景があって、また、時にはひとりだけの時間を使い、集中して製作したものだ。曰く、「ヴィンテージパーツてんこ盛りのチョッパー」である。

エンジンはS&S製のコンプリートモーター。排気量約1500ccのアーリー・ショベルヘッドだ。このアーリーをＶツイン製レプリカーフレームに搭載して、外装はスキモノには堪らない希少なオールドパーツで固められている。

「このバイクのオーナーがオークションとかでコツコツと集めたパーツを使っている。レア物ばかりだよ。AEEのトリプルツリーなんてかなり珍しいんじゃない」

高騰するヴィンテージパーツの中でもひと際人気の高いAEE。チョッパーパーツメーカーの先駆けとして知られる同メーカーのナロー・トリプルツリーに、41φのワイドグライド用フォークをセットアップ。ブレーキにアイアンスポーツ純正の通称ハンバーガードラムを装着することで、狙い通りシックスティーズ・ライクな雰囲気を醸し出している。これは、シンプルなキャンディブルー１色のペイントという潔さも功を奏していると言えよう。

ホイールは前後21、18インチとし、リアの18インチ化は現在のトレンドを押さえてのものだ。さて、それぞれのヴィンテージパーツに目を移そう。

まず、タンクはチョッパーと相性の良い、その昔ハーレーが製造していた小排気車ハマーの、『ハマータンク』を使用。そしてヘッドライト、リアフェンダー、ソロシート＆ピリオンパッドはベイツ製である。こうした主張の強いヴィンテージパーツを嫌味なく、全体のトーンにうまく調和させている。

「最初からすべてを計算尽くなんてことはなくて、手を動かしていくとこうなるっていう感じ。それに、ウチではショベリジが人気だからよくやるし。’60年代風のカスタムをイメージしたんだけど、なんとか形になったかな」

外観を古っぽく見せながらも、懐には信頼性の高いS&S製エンジンを抱くシックスティーズ・チョッパー。見る者の裏をかくカスタムである。

HANDLE

大きめのミラーと相まり、ハンドルのＺバーはワンオフながらヴィンテージパーツと違和感なく溶け込んでいる。

GAS TANK

チョッパーと見事なマッチングを見せるハマータンク。利便性の高いイグニッションスイッチも兼ねた作りとなる。

METER

バイク業界のみならず、世界中のコレクターが注目するSMITHS。機械式ならではのクオリティに惹かれる。

SEAT

経年劣化でしか成し得ない質感のソロシートとピリオンパッドはベイツ製。レザーのツールバッグも年代物だ。

MUFFLER

眩いクロームメッキのトランペットマフラーはアップタイプとされる。特有の快活なサウンドを奏でる。

SISSY BAR

外装パーツはどこを見てもシンプルそのもの。六角棒からなるシーシーバーにルーカステールライトを装着。