HARLEY-DAVIDSON XLCH 1969
SPORTY GARAGE
大ざっぱなブレーキと
ひっくり返したシフター
ハーレーのスポーツスター専門ショップ、スポーティガレージはKモデルから現行まで、車種を絞った運営スタイルで同じ嗜好を持ったファンをサポートしている。カスタムに関しては、歴史的背景に裏付いた玄人目線ありきの手法で料理するため、隙の無いクオリティでのフィニッシュが特徴となる。
1969年式XLCH。この1台は、もともと英車に乗りたかったオーナーが選んだカスタムマシンだ。そのため、ご覧の通り全体的にイギリス車のアイコン的存在のトライアンフのテイストが取り入れられている。
1950年~60年代のハードテイル仕様のトライアンフをイメージソースに、ベイツタイプのシートを載せて少し腰高のライディングポジションを形成。ビルダー横塚さん曰く、「当時の英車のアメリカ版のような。それにストリートっぽさも出したハーレーにしたかったんです」とのこと。
前後19/18インチからなるXLCHは、店に転がっていたKRのハードテイルを使いまとめられた。このハードテイル化は譲れなかった箇所で、英車の雰囲気を出すのに欠かすことのできないセットアップであった。横から見れば、『ストリートっぽさを出したアメリカ版トライアンフ』の表現が実に的を射たものであるのが分かる。
注目は全体のバランス感のみならず。最大のポイントは、ブレーキ周りである。当時ダートラレースを楽しんでいたアメリカ人の多くは、ブレーキレスのハードテイルで週末ごとにレースを楽しんでいた。しかし、いざ街乗りもしたいとなった時にブレーキは必要不可欠。そこで、ドラムは簡単に付かないためディスクを大ざっぱに装着。そう、あくまでも『大ざっぱ』にである。このブレーキ周りはそんなシーンを思い描きながら、真似て作られたものだ。
シフトチェンジも特徴的だ。1950年~60年代のレーサーをよく見ると、フレームにステップをマウントするタブが無い。これはバックステップになっているためなのだが、ビルダー横塚さんはそこも真似てわざわざKフレームのマウントタブをカットし、通常のステップが付かないようにした。代わりにジュラルミンのバックステップを付けるのだが、そのままでは当然シフトステップが前に遠すぎて届かない。そこで、シフターをひっくり返すという大技を用いたのである。
しかし、ただひっくり返しただけではシフトパターンも逆になってしまう。それでは乗り辛いため、XLCR用のポールキャリーという内部のリンケージを60年代の物に改良して装着。試行錯誤の末に、操作性も良好なブレーキ周りが完成した。
ここまで手間暇かけるのはオーナーにとっては初のハーレーで、乗り難かったら申し訳ないという思いからだ。「乗るなら長く乗って欲しいんですよ」。バイク屋の店主が皆持つ、偽らざる素直な気持ちである。
HARLEY-DAVIDSON XLCH 1969 DETAIL WORK
FRONT FORK
フロント周りは質感の高いレッドウイング製。1970年代にカヤバが海外用に輸出していたブランド名である。
HANDLE
ハンドルは同じくレッドウイング製でミリバー。メーターはスミスもどきの’70年代H-Dのイタリア製ベリア。
WHEEL
ハブはハーレー純正を使い、リムはボラーニ製に組み替えられる。ヤレた雰囲気がこのマシンに良く似合う。
ENGINE
エンジンはストックをブラックアウトで引き締め、レーサーをイメージしカムカバーに無数の穴が開けられた。
SEAT
一見ベイツ製に見えるシートは店にあった『もどき』だとか。お金をかけずにセンスで勝負した一台である。
FOOT STEP
フットステップは往年のKRレーサーのテイストを真似たもの。スプリングが利き、通常は上がった状態となる。
BUILDER’S VOICE
SPORTY GARAGE
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