YAMAHA TX650 1980
ECCENTRIC MOTORCYCLE
時めくチョッパーの
沸騰するチラリズム
国産車のチョッパーを触らせたら頭ひとつ抜けた存在の『エキセントリックモーターサイクル』。リズミカルに展開される緻密な作り込みで知られたビルダーの大西さんは、今回のTX650はほぼお任せで製作させてもらったと言う。
「ウチらしい、エキモらしいバイクを作って欲しいという注文でした。まあ俺の中ではシンプルなチョッパーというイメージで作り始めた感じです」
エキモならではの味を出しつつ、アクが強過ぎないギリギリのところを攻めたそうだ。そしてその中でも、タンクやサイドカバーの造形、リアフェンダーのスクープに遊び心を取り入れてみた、と完成したばかりのチョッパーを前に氏は回想する。
また、チョッパーでは定石ともいえるリジッドフレームを選択せず、得意のソフテイル加工を施した全体のプロポーションが、ナローに絞った車体と得もいえない調和を見せている点も素敵だ。
「ソフテイルカスタムって呼んでる。ハーレーのソフテイルモデルからその名称を付けてます。後ろがリジッドフレーム風に見えて、実際はモノサスでサスペンションが動くスイングアームの機能ですよね」
ディテイルに目をやれば同店固有のテクニックがきらめく。まずタンクは、おもいっきりナローなチョッパーを作りたかったことからピーナツタンクをベースに、氏の美的許容範囲の限界までナロード。そしてマウント部分を外から見せないように、タンク裏から前後2点留めでボルト類を隠したフラッシュマウントとされた。
サイドカバーも当然鉄の平板を曲げて終わらすだけでなく、アクセントにエアスクープを付けて造作。リアフェンダーに関しても、フェンダーの上にフェンダーを重ねた二重構造のスクープデザインとしている。本人曰く、これらは遊び心だと笑うが、果たしてこれこそがエキモの真骨頂だろう。
さて、大人の遊びはまだ続く。ワンオフのハンドルは鉄で成形したものだが、その三つ又との付け根部分に注目したい。ハンドルと三つ又をそのままつなげると性急すぎる印象があったため、テーパーさせてスムーズになるようボトム部分を製作。無垢のアルミから削り出したそれは、スリットを入れてデザイン性も高めている。更に、ワイヤー類はハンドル内に通してクリーンにフィニッシュするなど手落ちもない。
エキモらしいバイク。自分でもよく分からないと言うそれは、客観的に、遊び心を突き詰めた先の、芸術肌な作り込みに答えがチラリと覗く。
YAMAHA TX650 1980 DETAIL WORK
HANDLE
手前にベントさせた鉄製ハンドル内にレバーを溶接してワイヤー類を収納。ボトムはアルミ製の削り出し。
GAS TANK
ピーナツタンクをベースに幅詰め。ペイントは交流の深い東京都立川市のステューピッドクラウンが担当した。
SIDE COVER
サイドカバーのエアスクープは名目上は左側のコイルを冷却するためのもの。でも実際は遊び心だと目尻を下げる。
SWINGARM
ソフテイルフレーム化したリアエンド。シート下に白色のモノサスを内蔵。左右出しのマフラーはステンレス製。
REAR FENDER
リブフェンダーの上に更にフェンダーを載せて成形。二重構造となった凝ったデザインが同店のお家芸である。
SISSY BAR
鉄棒を曲げて終わらせないのがエキモの『色』。中に手作業で製作した数種のオーナメントをアクセントに追加。
BUILDER’S VOICE
ECCENTRIC MOTORCYCLE
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