HARLEY-DAVIDSON FX 1975
ACE MOTORCYCLE
語らないビルダーの
ゆだねた主張
知る限り、エースモーターサイクルの徳山さんほど言葉で主張しない人も珍しい。でもその分、バイク単体での主張は凄まじいものがあって、ちらりと視界の片隅に見えただけの姿でも、時間がたつにつれて逆にくっきりとしてくる。
今回のニューオーダーチョッパーショーもまさにそれで、何メートルも先に出展してあるそれをいったん通り過ぎたまでは良かったけど、その後がいけなかった。いったいどこのショップのチョッパーなのかと、もうソワソワしてしょうがない。で、引き返してみれば、予想はしていたけど、案の定のエース節が炸裂である。
‘60年代後半から’70年代前半にかけてのチョッパーをイメージしたと言う。もちろんその言葉には、便宜上の表現が多分に含まれていて、実際はその年代のテイストはごくわずかで、あとは氏の頭の中にあるデザインを落とし込んだオリジナルだ。
前後ホイールは19/16インチで、フォークはノーマルを使い、ボトムケースをスムージング。ピタリと覆うカバーはワンオフで製作したものだ。では、タンクからリアフェンダーにかけてつながる、肉感的ですらあるラインはどうだろう。
まず、タンクである。汎用のスポーツタイプを用意し、トップパネルを平らにならして、両サイドは氏がイメージするジャストなふくらみを持たせて成形。当時のインディアンのタンクを思い描いたというそれは、上側2ピース、下側2ピース、トンネル部分1ピースの全5ピースの鉄板で構成されている。そして、そのどのピースも、叩いてローラーで均してを繰り返して作った、鬼気迫るかの一片だ。
リアへと流れるスムーズなラインには、タンク後端のモールディングが大きな役割を果たす。仕上げに微量のパテを使うが、ほぼ金属で太く成形した部位は、鉄パイプ2本をつないで溶接し、丁寧にスムージングしてフィニッシュしたもの。既存の細い状態とは比べるまでもなく、流麗な一体感には雲泥の差が生じる。
そのまま視点を移して、シートエンドの造形にも触れたい。横から見れば瞭然の、シート厚とツライチで合わせたスクエア型のテールボックスは同店お得意のシェイプ。まるでテトリスを思わすカッチリ感は、いつまでも眺めていたい痛快なシルエットだ。
オイルタンクとマフラーもワンオフである。車体から出っ張らないように、タイトなクリアランスでイチから加工してのフィッティング。こうした、どのディテイルにも相当の手数をかけた集大成がエースの『主張』となって、人を惹き付ける。
HARLEY-DAVIDSON FX 1975 DETAIL WORK
HANDLE
ショートタイプのライザー一体のハンドルは脇の締まるタイトなポジションを形成。同店特有の造形である。
FRONT FORK
FXのノーマルフォークのボトムケースをスムージング。カバーはフォーク径にジャストであつらえたワンオフ。
GAS TANK
全てのディテイルが一から製作された完全ワンオフ。5ピースの鉄板をつないだタンクはダークブラウンに塗装。
OPEN PRIMARY
ミッドコントロール周りとカバーもワンオフ。車体の雰囲気に合わせてパーカーライズの表面処理が施される。
TAIL LIGHT
シート厚とツライチで合わせたテールライトボックス。シンプルなパネルステーも全体の雰囲気にマッチする。
MUFFLER
一見汎用のスラッシュカットと思いきや、よく見れば全くの別物。限りなく車体に寄せた完全ワンオフ。
BUILDER’S VOICE
住所・TEL
住所 | 兵庫県神戸市中央区元町高架通3-202 |
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