H-D SHOVELHEAD 1973
FATECH
今を生きる技術者と
往年のレーサーとの邂逅
「いつもチャレンジなんですけど目標に向かって作る。だけどやっぱりどうしても技術者だから、今までと同じものを作るよりは少しだけアレンジしてみたいとか。そういうのがあります」
こと物作りに対して並ならない気魄(きはく)を注ぐビルダーである。常に高みを目指して精神を集中させ、自身の腕を鍛え続ける渡辺さんは今回、往年のレジェンドレーサー、ジョーペトラリが1937年にワールドレコードを樹立したナックルヘッドレーサーをソースとしてミッションを進めた。
「ジョーペトラリが乗っていた有名なバイクがあるんですけど、それに寄せるっていうんですかね。『その人がもしストリートバイクに乗ってたら』みたいなイメージでまとめたら面白いんじゃないかなって」
目をつぶり、頭に浮かんだ幻影をカタチに落とし込むのがビルダーの仕事である。そこで氏はまず、フレームワークから着手。パウコ製フレームをベースにするものの、エンジンとミッションマウント以外の80%以上をすべて作り直した。
ベンダーマシンを使った機械曲げにより、シートエリアに顕著な美しいラインで全体を構築。社外品にありがちなストレートラインではなく、純正フレームを思わす3カ所の曲げを持たせた端麗な姿へと組成。これによりステム位置が1インチ低く、リアが1.5インチ詰まったショートホイールベースとされた。
一方、お家芸の金属加工も容赦なく各ディテイルにてスパークする。今回はガスタンクとオイルタンクに新たな挑戦がなされ、まずガスタンクの黄色のピンラインの部分にビードを入れて『段』を付帯。これは丸棒でもパテでもなく、パネル自体に段のプレスラインを加えることで剛性を高めて造形されている。
次にオイルタンクは、以前は2mm厚のアルミで作ったものを今度は1mm厚のスチールで敢行。逆反りのリバースカーブを積層したフィン形状の部分がそれにあたるが、これらは最新鋭のクラフトフォーマーと呼ばれる専用機器を巧みに操り、タンク表面が3次元的なアールを描き成形されたものだ。
「どうしてそこまで作るのって言われることもあるんですけど、やりたいことのために、それを形作るためには作るしか方法論がないというか。そういうことなんですよね」
例えそれがごくわずかな違いだとしても、そこにやる価値があり、求められるのであれば選択肢はただひとつ。氏は、気概に満ちた目で信念を貫いている。
HARLEY-DAVIDSON SHOVELHEAD 1973 DETAIL WORK
FRONT FORK
長めの41φフォークをショート化してマウント。後方のフレームダウンチューブの端整なラインに目が奪われる。
FRONT WHEEL
ジョーペトラリのレーサーをソースとしたフロント周り。カバーは金属成形でここまでの造形に仕上げられた。
GAS TANK
新たな挑戦として黄色のラインの部分に『段』が入る。パテや丸棒ではなくシートメタルでプレスラインを付帯。
FOOT CONTROL
メインパート以外もワンオフで製作。車体のオールドタイマーな雰囲気に合わせて作り黒染めにてフィニッシュ。
OIL TANK
フィン部分は逆反りのリバースカーブで積層されたもの。タンク表面は3次元的にやわらかなカーブを描く。
REAR END
フレームは1.5インチ詰められショート化。フェンダーステーの造作一つとっても丹念な物作りの姿勢が覗く。
BUILDER’S VOICE
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