HARLEY-DAVIDSON S&S KNUCKLEHEAD
BOOTLEG
叩き上げのビルダーによる
力まず仕上げたオールドスクール
リジッドフレームにナックルヘッド・エンジンを搭載。フロント周りに74スプリンガーフォークとミディアムエイプをセットし、リア周りにフラットフェンダーとアップスイープ・トランペットマフラーを装着した、正しくオールドスクール・チョッパーである。
しかし、トラディショナルなカタチながら、技術に裏付くフェンダーステーなどのカチっとした細部の作りと、複雑に絡み合う左右非対称のペイントワークにより、ただのオールドスクールという表現だけでは決して片付けられない存在感を放った一台だ。
製作は、鈑金・溶接技術に定評のある埼玉県川口のブートレグが行った。ビルダーの菊原さん曰く、今回のナックルヘッドは特別な作り込みをしたわけでもなく、あり物を上手く使って綺麗にまとめたチョッパーだと言う。
そのため、タンクも一枚板から成形したものではなく市販品をベースに加工。中央にリブを付けてガスコックとキャップの位置を換えた程度とのこと。リアフェンダーは市販品をそのまま使用して、ステーのみ『ただの棒じゃつまらない』という理由からワンオフで作っている。
完成させるのに何日も付きっきりで手がけたバイクではなく、あくまでもサラリと。そんなチョッパーのポイントは、しいて挙げれば『リアの油圧ドラム』だと話す。
「これを付けるにはわざわざハブを加工しないといけなかった。そのままだとホイールが右側にオフセットしてしまうんです。だからハブから加工し直して、ベアリングも入れ直して、スポークも張り直してという感じでセンターを出した。一番手こずったところですね」
カスタムテック社製の油圧ドラムを、現行車の最新モデルに付けるのであればおそらくこうした加工は必要なかったであろう。しかし、旧車の場合、すんなりといかないケースは往々にしてあるものだ。そこを、付かないから諦めるのではなく、なんとかして付けるという姿勢で挑むのが世のカスタムビルダーである。
「いろいろこうして聞かれても本当に作り込んだバイクというわけではないんですよ(笑)。でも不思議と、ウチが目一杯作り込んだバイクよりもウケが良い。だから逆に、そんなに一生懸命作り込まない方が良いのかな、なんて思っちゃんですよね」
とは言え、菊原さんが本気で作り込んだバイクは他を圧倒する。カスタムと真正面から向き合っているビルダーにしか作り得ないそのクオリティは、一種独特の雰囲気すら醸し出す。
ひょっとしたら彼の言うとおり、一般的にウケが良いのは力の抜けたチョッパーなのかもしれない。しかしそれは、スキルやセンスといったバックボーンがあって初めて成り立つもの。つまりは、正真正銘の『叩き上げ』である菊原さんが手がけるバイクでしかそうした反応は得られないはずである。
HARLEY-DAVIDSON S&S KNUCKLEHEAD DETAIL WORK
HANDLE
ベース車両に元々付いていたハンドルはハマーサイクル製。左右グリップ周りの真鍮パーツがアクセントになる。
GAS TANK
タンク中央にリブを付け、ガスコックとキャップ位置を変更。ペイントは同じく川口のレーザーズペイントが担当。
ENGINE
エンジンはS&Sのコンプリート・ナックルヘッド。キャブはブラックボディのS&S製Eキャブを選択。
SEAT
フラットフェンダーにピタリと這うシートは埼玉県戸田のスカンクによるワンオフ。絶妙なタックロール幅である。
FOOT CONTROL
ワンオフのシンプルなステップ周りもお手の物。ご覧の自然な状態で仕上げるには相応の経験値が不可欠である。
MUFFLER
パウコ製アップスイープ・トランペットマフラーを装着。注目したいのは六角ボルトを使い美しくマウントしたステーだ。
BUILDER’S VOICE
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